GMP文書管理 ~Data Integrityを踏まえた文書・記録の作成と管理~【第5回】

2018/11/16 品質システム

1.データインテグリティ(Data Integrity)とは
 Wikipediaには、データインテグリティとは、情報処理や電気通信の分野で使われる用語であり、データが全て揃っていて欠損や不整合がないことを保証することを意味する。すなわち、各種操作(転送、格納、検索)が行われる際にデータがひとまとめで扱われ、目的とする操作に対して期待されるデータ品質を維持する。簡単に言えば、データインテグリティとは、データが一貫していて正しく、アクセス可能であることを保証するものであるとされている。
 情報処理や電気通信の分野で使われていた用語が、製薬業界でも定義され、使われるようになり、データの品質(完全性)を保証する手段として、GMPの重要要素となっている。

1.1 データインテグリティに関する規制
 2015年3月にイギリス医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は「GMP Data Integrityの定義と業界のためのガイダンス」を発行した。その中でデータインテグリティは医薬品品質システムの基本であり、医薬品が要求品質を満たすことを保証する最も重要な取組みであるとしている。
 このガイダンス発行の背景には「GMP査察における指摘事項のレポート」(2013年版)においてデータインテグリティに関する指摘事項が“近年群発している”と報告され、今後の最重点査察事項とすることを宣言している。
 日本においても、臨床データやラボデータの改ざん、あるいは手入力や取扱不良によるデータの間違いや欠落、システムトラブルによるデータ喪失など、悪意によるものだけではなく、作業ミス等による「データの完全性」に関する問題も急増している。

 MHRAの後に、様々な規制当局より、データインテグリティに関するガイドラインが発出されている。日本がPIC/Sに加盟したことにより、日本への導入を考慮するとPIC/SのGMP/GDPを対象とするデータインテグリティドラフトガイドラインを理解することがよいだろう。

                 規制領域    発出年月   版情報
    ▷ MHRA(英国医薬品庁)   GMP     2015/3    1.1
    ▷ MHRA(英国医薬品庁)   GxP      2018/3    初版
    ▷ WHO(世界保健機関)    GxP      2016/7    初版
    ▷ FDA            GMP     2016/4   ドラフト
    ▷ PIC/S         GMP/GDP   2016/8    ドラフト

2ページ中 1ページ目

執筆者について

新井 一彦

経歴 C&J 代表
化学系企業にてバイオテクノロジーを利用した医薬品の探索、開発研究に従事。その後、開発医薬品(無菌製剤)の製造工場立上げに製造管理者として関わりGMP組織体制、基本構想を構築した。
平成17年の改正薬事法完全施行に合わせ、新たに製造販売業を取得するため某ジェネリックメーカーの設立に関与。取締役信頼性保証本部長として総括製造販売責任者の責務を担った。
現在、C&J 代表として、講演、執筆、国内外のGMPコンサル業務活動を推進。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

5件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年7月2日(水)10:30-16:30~7月3日(木)10:30-16:30

門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション

2025年8月21日(木)10:30-16:30

GMP教育訓練担当者(トレーナー)の育成

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます