GMP文書管理 ~Data Integrityを踏まえた文書・記録の作成と管理~【第5回】

1.データインテグリティ(Data Integrity)とは
 Wikipediaには、データインテグリティとは、情報処理や電気通信の分野で使われる用語であり、データが全て揃っていて欠損や不整合がないことを保証することを意味する。すなわち、各種操作(転送、格納、検索)が行われる際にデータがひとまとめで扱われ、目的とする操作に対して期待されるデータ品質を維持する。簡単に言えば、データインテグリティとは、データが一貫していて正しく、アクセス可能であることを保証するものであるとされている。
 情報処理や電気通信の分野で使われていた用語が、製薬業界でも定義され、使われるようになり、データの品質(完全性)を保証する手段として、GMPの重要要素となっている。

1.1 データインテグリティに関する規制
 2015年3月にイギリス医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は「GMP Data Integrityの定義と業界のためのガイダンス」を発行した。その中でデータインテグリティは医薬品品質システムの基本であり、医薬品が要求品質を満たすことを保証する最も重要な取組みであるとしている。
 このガイダンス発行の背景には「GMP査察における指摘事項のレポート」(2013年版)においてデータインテグリティに関する指摘事項が“近年群発している”と報告され、今後の最重点査察事項とすることを宣言している。
 日本においても、臨床データやラボデータの改ざん、あるいは手入力や取扱不良によるデータの間違いや欠落、システムトラブルによるデータ喪失など、悪意によるものだけではなく、作業ミス等による「データの完全性」に関する問題も急増している。

 MHRAの後に、様々な規制当局より、データインテグリティに関するガイドラインが発出されている。日本がPIC/Sに加盟したことにより、日本への導入を考慮するとPIC/SのGMP/GDPを対象とするデータインテグリティドラフトガイドラインを理解することがよいだろう。

                 規制領域    発出年月   版情報
    ▷ MHRA(英国医薬品庁)   GMP     2015/3    1.1
    ▷ MHRA(英国医薬品庁)   GxP      2018/3    初版
    ▷ WHO(世界保健機関)    GxP      2016/7    初版
    ▷ FDA            GMP     2016/4   ドラフト
    ▷ PIC/S         GMP/GDP   2016/8    ドラフト

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