米国FDAが、インドのAPI製造業者に対し、査察により判明した深刻なCGMP不適合に関連して発出した警告書について

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 2011年6月から7月にかけて5日間にわたり行った査察の結果、FDAが当該製薬業者に対し警告書を発出した。査察によりFDAが明らかにした指摘事項Observation(FDA Form 483)に対し当該業者のマネージメントは一応対応したようだが、FDAは十分な対応が成さされていないと考えたようである。
 本記事の中で引用した警告書は、査察の中で指摘を受けたCGMPに対する主要逸脱事項を具体的に述べている。また、警告書は業者に対して違反事項を是正するためにとるべき具体的なアクションをも提案をしている。更に、もし指示を受けた対応策の全てを実行しない場合、FDAが取る法的な対応手段についても警告書は明確に述べている。
 
 本警告書はFDAがどの様な問題について関心を示すかについてきわめて具体的に示している点において、非常に興味深い。また、本警告書は、査察での重大な指摘事項に対してどのような対応が求められているかについて詳細な忠告となっている。更に、指摘事項が修正されない場合、違反業者やその製品に対しFDAが取り得る対抗措置と法的手続きについて示している。
 
 なお、下記に引用した警告書は、読者の理解を助けるために、官僚的な言い回しを若干修正してあることにご留意いただきたい。
 
≪引用≫
2011年9月12日
 
M. Soma Raju殿
Yag-Mag 研究所有限会社
ハイデラバード市、アンドラプラデッシュ州、インド
 
 2011年6月27日から7月2日にかけて行った貴社API製造施設に対する査察において、米国食品医薬品局(FDA)の査察官がAPIの製造に関してCGMPからの深刻な逸脱を指摘しました。これらの逸脱は、貴社のAPIが米国連邦食品、薬品及び化粧品法(FD&C Act)において不適格品と見做され、それらの製造、工程、梱包、保持に係る手法、施設、管理等がCGMPに従って運営、管理されていないことになります。
 
 我々は、7月18日付貴社回答書を検討した結果、充分な是正措置が欠落していると認識しました。
 査察において指摘した具体的逸脱事項は、これらに限定されるものではあませんが、以下の通りです。
 
1.製造時の記録書の欠如
 
 一例を言えば、貴社は米国薬局方xx(削除)のxx(削除)のバッチを2009年4月から2010年5月にかけて製造しましたが、貴社自ら認めているように、当該バッチレコードが出荷後数か月経って作成されておりました。貴社は、製造から当該バッチが使用されるまでの間、製造記録の適切な承認確認署名や検証の保証を含めて、関連記録の正確な記載と、データの完全性に対する義務を負っています。バッチレコードは、当該バッチの製造段階で完成されるものであって、日付を遡った記録は受け入れられるものではありません。製造バッチレコードが信頼の置けるものではないという本指摘事項は、貴社の根本的な機能不全を示しています。
 
2.API製造施設がその意図した目的に適合した設計及び構造になっていないこと
 
 例えば、我々の査察において貴社施設は、洗浄と汚染防止の観点から不適切な設計であることが判明しました。本件は、製造設備、材料及び適切な防護なしに外部に露出した表面に溜まった残渣や錆等から明らかです。それらは即ち、不明瞭且つ漏れている配管、窪みがありレベルが取れていないため水捌けが悪く、溢水や溜まり水が見られる床、不適切で不潔なトイレ設備等であります。
 
3.交差汚染防止のための適切な手順書或いは手順の欠如
 
 例えば、2011年4月以前において、貴社は洗浄記録を残しておりませんし、洗浄そのものも行っていなかったと、貴社職員が査察官に説明しています。共用の製造設備においてバッチ毎、或いは製造する製品が変わる度に洗浄が行われたという証拠は全く存在しません。異なる製品の製造毎に、交差汚染を防ぐためバリデートされた手順によって共用設備を洗浄することは、非常に重要な貴社の責務であります。洗浄計画は、全ての許容される残渣の許容基準や、洗浄方法と洗浄剤の選択に対し、確固たる正当性評価を示す必要があります。
 
4.手順書に従ったAPI製造に係る書類の準備、検討、承認の欠如
 
 例えば、貴社は、2010年4月、米国向けに米国薬局方xxのxxバッチを製造、出荷、流通いたしました。貴社は、これらの製造を、変更管理や不適合品、分析試験の逸脱、品質のばらつき調査、或いは消費者苦情の逸脱、或いは年次製品検証に係る手順書もなく行いました。
 更に、バッチxxのバッチレコードは不十分でした。当該バッチレコードには、製造或いは工程指示書、工程の制限値や制御値、或いは実際の検査結果の記録もありません。貴社は、製造に先立って、貴社の品質システム、基本手順書、及び不可欠な品質保証機能を確実にする義務を負っています。貴社の品質システムは、次回のFDA査察において総合的に再評価することになります。
 
5.APIの原料及び製品の適正な管理、製造、分析、承認或いは拒否の欠如
 
 例えば、米国薬局方xxのxxのバッチが2010年4月から2011年の3月にかけて出発原料の充分なサンプル無しに出荷流通されています。社内分析記録及び貴社職員の話から、出発原料xxの内部ロットxxが製品ラベルや製造業者の情報なしに代理店経由で名前の分からない製造業者から納入されたことが判明しています。社内記録によれば、当該原料は、イニシャルGC、KF、及びMP等によって検査されているが、それらの検査をサポートする生データも、使用した検査器具の記録も残っていません。更に、最終製品であるAPIの各バッチが適正に識別されずに混同されたため、遡及可能な記録が存在しませんし、市場に出たロットは製品バッチの混合割合が不明なままとなってしまいました。
 
 貴社は回答書の中で、貴社の施設が「FDAレベルに達していない」と述べており、修正及び予防措置が必要であると認めていますが、現時点でそれらのアクションが終了していません。我々は、貴社が貴社の品質及び製造管理全般にわたる広範且つ完全な評価を実施し、全ての製造されたAPI製品が本来の品質と純度の特性を維持していることを保証できるようにすることを推奨いたします。我々は、貴社がデータの完全性の問題に対し、経験ある第三者監査機関を採用して、貴社の深刻なCGMP不適合の問題の調査と助言を仰ぐことを強く推奨します。貴社の広範なCGMP不適合の問題は、大幅な改善と、時間及び資金額においても相当な投資を必要としています。あらゆる面で検討を必要としていますが、中でも、ただしこれらに限定するものではありませんが、施設改善、プロセスバリデーション、完全且つ正確な製造手順書、トレーニング計画、品質部門の有効性、及び品質全般にわたる有効なシステム構築等の問題です。
 
 本状の中で指摘した逸脱事項は、貴社施設における全ての問題を網羅的に述べたものではありません。貴社は、上記で示した逸脱を調査し、原因を明確にして、その再発と新たな逸脱事項の発生を防止する責務があります。もし、貴社のAPIを米国に輸出するならば、米国の全てのCGMPに係る基準の適合と、全ての米国の法令及び規則への順守を保証する必要があります。
 
 なお、貴社はFDA規則及びFD&C Actで求められているところの米国内の流通に必要とする登録とリストアップについて、API製品の全品目に渡る手続きを完了していません。査察中に当該査察官が貴社においてこの問題を話し合いました。しかし、貴社は今回の回答書の中でこの問題について触れていません。登録の方法と品目のリストは下記のインターネットwebsiteで参照可能です。( http://www.fda.gov/cder/drls/registration_listing.htm. )
 貴社は、この登録とリストアップを完了し、本状への返信で当該事項が完了したことを報告してください。
 
 全ての改善が完了し、FDAが逸脱の修正とCGMPへの順守を確認できるまで、FDAは貴社のAPI製造業者としてのあらゆる新規の申請或いは追加申請への許可を保留いたします。また、貴社の製造工程がCGMPに適合していることが確認できるまで、貴社はFDAのImport Alert(輸入警報)下に置かれ、FDAはインドのYag-Mag Labs Private Limited社によって生産された全ての品目の米国内への輸入拒否を継続します。貴社品目は、貴社の製造方法と管理がCGMPに不適合と認められたことによるFD&C Actに基づく輸入拒否対象品となっています。
 また、現在米国内に流通している貴社製品の違反状況を速やかに改善しない場合は、通知なしに法的措置を発動し、無制限に差押え或いは差止め命令を実施します。他の米国連邦機関も、貴社への発注を検討している場合は、本警告書の内容を考慮することがあります。
 
 本状から15勤労日以内に、弊方宛て書面にて貴社が取られた逸脱を修正する具体的措置について、逸脱の再発を防ぐために取られた全ての措置についての説明とそれを担保する書類のコピーも含めて、報告してください。もし、15勤労日以内に全ての修正措置を完了できない場合は、その遅延の理由と、完了予定日を記載してください。また、もし貴社がAPIの製造と販売を終了するときは、その旨を製造中止の日付と理由とともに、回答書に記載してください。
 もし、本状に関してご質問或いはご懸念があれば、審査事務官エリザベスL.フィルピーにご連絡ください。住所及び電話番号は以下の通りです。
 
住所・電話番号
 
米国食品医薬品局、
ディレクター   スティーブン リン
 
≪引用終り≫
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