医薬品製造設備の基本、計画、設計、建設プロジェクトを学ぶ【第2回】

6.医薬品プロジェクトの特徴
 一般的に、プロジェクトの開始は、顧客(施主、オーナー)が、「どのような設備を建設したいか、どのように進めたいか」といった要求事項をまとめて、コントラクタに引き合いを始めることから始まります。これらは、RFP(Request For Proposal)と呼ばれる顧客がまとめる図書によってコントラクタに開示されます。この図書により、設備の見積もりもできます。 一方、医薬品のプロジェクトでは、こうした顧客要求条件をまとめた図書がない場合もあります。顧客がプロセス・ライセンサーも兼ね、顧客からは「この製品を製造したい」との要求しかないような場合です。この場合、コントラクタは顧客の希望する設備や進め方などについて、基本的な要求事項をもとに、基本計画にまで昇華して提案する、といった方法が必要でした。つまり、提案型のプロジェクトである場合が多かったのです。そのため、コントラクタでは、業種別に固有技術を保有して、競争力の高い生産システムの設計実績を蓄積し、顧客に新しい視点を提供することが重要な能力ということになりました。固有の技術とは、例えば、医薬品プロジェクトでは、GMPに関する技術であったり、本稿では触れませんが、食品プロジェクトの場合ではHACCPに関する技術だったりします。もちろん、こうした、品質に特有の技術だけではなく、プロジェクトの進め方や医薬・食品の設備に特有の設計・建設技術も必要となりました。例えば、一般の化学プラントと異なり、医薬・食品の製造設備は建物の中に設置されます。製造設備の設置場所の周囲環境を、必要に応じて清浄な環境とする必要があり、外界と区分けされた建物の中を製造区域とする必要があるためです。建物の中に設備を設置すると、まず建物を建設し、そののち設備の組み立てを行うことになりますが、工程を短縮するために、建物の建設中に適切なタイミングで設備の組み立てを同時並行的に開始するという、いわゆるコンカレント・エンジニアリングの手法も必要となります。さらに、医薬品では、よく知られているようにバリデーションの実施が必要となります。バリデーションの実施とその結果の評価、文書化は医薬品の製造を開始するための要件でもあり、プロジェクトの開始段階からその準備が必要です。設備計画の上でも、設備がGMPの要件を満足するように、あらかじめ建築レイアウトや空調計画などハードの仕様に織り込み、プロジェクトが進行したあとで、設計や工事のやり直しをしなくても済むようにGMPの知見を生かす工夫が必要となります。さらに、衛生上の観点から、あるいは微生物管理の必要から、設備そのものの材質、表面処理など、化学プラントとは違った配慮が必要となりました。医薬品機器の専門メーカでは、GMP対応機器として技術を競っているのは周知のとおりです。

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