経皮吸収製剤 ~基礎から応用まで~【第6回】

2024/04/26 製剤

経皮吸収製剤(貼付剤)に用いられる包装について。

6.経皮吸収製剤(貼付剤)に用いられる包装

製剤設計において、処方検討と同様に重要な因子として包装材料の選択がある。第18改正日本薬局方「製剤包装通則」によると、医薬品包装(ここでは薬袋とする)は、有効期間にわたって規定される医薬品の品質規格を保証できるよう、その適格性を開発段階で十分に検討することが重要であり、製剤特性に応じた包装適格性の検討の結果に基づき、最終製品の規格及び試験方法、工程内検査、並びに製剤包装に用いる資材の評価等、品質を適切に管理するための項目を設定するとある1)。一般的に医薬品包装に求められる機能としては、
1)    水分、薬効成分の揮散が無い。
2)    薬効成分を吸着して物性の劣化を生じない。
3)    遮光性を有する。
4)    破損や漏れを生じない。
などがあげられる2)

第18改正日本薬局方での皮膚に適用する製剤<貼付剤>の保存容器に関する記載は、基剤の違いからパップ剤とテープ剤で異なる。パップ剤は基剤に水を含むため「本剤に用いる容器は、通例、気密容器とする。製剤の品質に水分の蒸散が影響を与える場合は、低水蒸気透過性の容器を用いるか、又は低水蒸気性の包装を施す。」とある。一方、テープ剤では基剤にほとんど水を含まないため、保存容器に関しては「本剤に用いる容器は、通例、密閉容器とする。製剤の品質に湿気が影響を与える場合は、防湿性の容器を用いるか、又は防湿性の包装を施す。」とある。
まず、パップ剤は基剤に一定量の水分を含むため、経時的に水分の蒸発を防ぐ設計にする必要があり、更には揮発成分を含む場合もあるため、薬袋には水蒸気などのバリアー性や酸素バリアー性に優れ、また遮光性も有するアルミニウムフィルムが用いられることが多い。更に薬袋の成型時にはヒートシールをすることが多いため、内層にはポリエチレンやポリアクリロニトリルなどのプラスチックフィルムが用いられる。表7に日本で市販されている主なパップ剤の包装材料を示すが、いずれのパップ剤もアルミニウム箔を含む複合ラミネートから構成されていることが分かる。

これに対し、テープ剤の基剤はほとんど水分を含まないため経時的な吸湿等による安定性への影響を除けば、水分の影響を考慮する必要は無いが、一方で薬効成分や添加物の揮散を考慮する必要があるため、薬袋に求められる機能はパップ剤と同様である。表8,9に日本で市販されている主なテープ剤(局所テープ剤、全身性経皮吸収製剤)の包装材料を示す。


表8、9からもわかるように、テープ剤の場合もアルミ箔を用いた複合ラミネートを用いていることが分かる。いずれの製剤も品質担保に加えて、視認性、開封のしやすさなどの使用性、製造適性やコストなど、多面的に検討した結果の薬袋である。

 

 

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執筆者について

山内 仁史

経歴

1981年第一製薬株式会社(現第一三共株式会社)に入社。研究所 製剤研究センター配属となる。株式会社ディ・ディ・エス研究所、埼玉第一製薬株式会社研究部に出向し、その後ニプロパッチに転籍。研究開発部長、ビジネス開発部長、春日部工場長を歴任。ニプロファーマ株式会社品質保証部参与を経て、現在は公益社団法人日本薬剤学会事務局顧問。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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