製薬事業所のペストコントロール【第3回】

特定の昆虫の制御
 ー課題となりやすい昆虫

 全ての製薬事業所に該当するわけではないが、“侵入の阻止が困難である”、“清掃除去が困難な箇所で繁殖している”といった、課題となる昆虫(類)の幾つかは、他の製薬事業所でも同様の課題となっている。例えば、以下のような事例が代表的な課題であろうか。

  • 清浄区域でチャタテムシが生息している
  • 包装区域でタカラダニが捕獲される
  • 共用部にトビムシが侵入している

昆虫(類)の侵入や繁殖を抑え込むには、ペストコントロールに係る法規制(例えば、省令「薬局等構造設備規則」、米国連邦規則:CFR21 part 211 cGMP Subpart C-Buildings and Facilitiesなど)に沿った構造設備を用意することに加え、各昆虫(類)毎にその特性、すなわち、虫体のサイズやライフサイクル、繁殖条件を踏まえた上で、昆虫(類)制御の管理手段を検討することが必要となる。上記の事例に基づいて昆虫(類)の特性を踏まえ、管理手段を考えてみたい。

ーチャタテムシの特性と管理手段
 チャタテムシの中でも、製薬事業所で課題となりやすいチャタテムシは“ヒラタチャタテ”と呼ばれる種(体長1~1.3mm)になる。カビ等を食し、多湿な環境を好むが、温度や湿度の変化に敏感な生物であり、以下の繁殖条件が知られている。

  • 温度18~35℃、相対湿度70~98%
  • 繁殖好適条件は、温度24~29℃、相対湿度75~90%
  • 0℃以下では3時間で死滅。50℃以上では1時間で死滅
  • 相対湿度60%以下では発育停止

ヒラタチャタテは、簡単に言えば弱々しい生き物である。ヒラタチャタテを実験に用いる場合、人工飼育した施設から実験施設まで輸送するのであるが、例えば100頭の虫体が実験に必要である場合、200頭を輸送する。輸送中の温湿度の変化に敏感であり、何割かが死亡してしまうからである。では何故、製薬事情所では繁殖するのであろうか。それは製薬事業所内の安定した温湿度環境、例えばクリーンルームやその周辺施設が、ヒラタチャタテの繁殖に好適であるからである。
 上記の繁殖条件の一つ、“相対湿度60%以下では発育停止” の条件をクリーンルームの基準は満たしているのに何故生息するのか、という質問を受けることがあるが、これには以下の実測によって説明できる。

【ある事業所の中の生息していた室内の湿度を実測すると、室内のモニタリングポイントに於いては相対湿度50%以下であったが、室内の各所、例えば装置の下、作業台の裏などを実測すると、相対湿度60%を超えており、室内は部分的にヒラタチャタテの生育に好適な環境が実現していた。】

 

 

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