ドマさんの徒然なるままに【第56話】Flexible GMP・後編

第56話:Flexible GMP・後編

後編のはじめに
前編の第55話の序章にも記したが、読み始めたら、ザーッとでも良いので最後まで、お読みください。前編をお読みでないなら、できたら前編の第55話からお読みください。そうでないと、本話のタイトルとして“Flexible”と付けた、筆者の真意が分かりません。書いておいて言うのも何ですが、誤解だけは避けたいのです。よろしくお願いします。

本話は、『勝手にGMP論』シリーズ*1の第10弾(カミングアウト版を除く)であり、章番号は前編からの続きとして附番している。

なお、本話においては、品質に関わるGood Practices全体、具体的にはGMP省令・GQP省令・GCTP省令・GDPガイドラインの総称として「GMP」と記しているので、その点をご容赦願います。特定のGMPや本来のGMPに限定して言及している場合には、都度具体的に表記を施しているので、その点をご了承願います。


第9章:規制強化が悪徳企業とのイタチごっこになってしまうことだけは勘弁してくださいね。
前編の第55話の「第8章:品質問題と規制強化のタイミングが合いすぎだと思うのは、私だけ?」にも記しましたが、規制強化のタイミングがGMP違反企業の出始めた(露呈しだした)頃と合っちゃってるんですよね。別にそれが行政の本命の狙いではなかったんでしょうが、一部にはあったんじゃないかと邪推してしまう。

じゃー、品質の向上や安定供給のための純粋な規制強化かと言えば、そこはちょっと無理があるような気が・・・。率直に言う。イタチごっこみたいなことに成りかねないので、それは勘弁してほしいなー、ということです。そもそも、まっとうな会社(製造所)さんであれば、GMP云々やQuality Culture云々を言わずとも、既に、そして今後も、自社レベルにマッチさせて実直に品質の維持・向上に努めていると思いますよ。

一方で、違反をするような企業、どんなに規制強化したところで、それはそれとして平然と違反するんじゃないかという気がする。以前にどこかの話の中でも述べたが、人の性格が変わらないように、企業の体質もそう簡単に変わるとは思えない。規制の強化は、素直な会社さんを苦しめるだけのような気がしてならないのである。言い過ぎである。でも、本音である。

逆説的に言えば、大きな品質問題を出さない会社は優良企業と言えるんじゃないですかね。そういった会社を褒めて拡大していく方法だってあるはずである。個人の能力が褒めることで伸びることだってある。ならば、同様のやり方で、より良い企業になることだってあるんじゃないか、と単細胞生物のような頭脳しか有していない筆者(単細胞生物に失礼か? 最近ではAI様の爪の垢を煎じて飲もうかと思っております)はそう思うのである。


第10章:そもそもGMPは性悪説ベースであっても、性格を悪くするわけじゃないよね。
「GMPは性悪説がベースにある」と言われているが、だからと言って、担当者の性格、まして企業や行政の性格を悪くするわけじゃないよね。「ヒトは間違いを起こすことがある」ということでの性悪説のはずが、担当者であるヒト(GMPで言うところの職員)そのものが性悪になってしまっては、元も子もないんじゃないですか。でも、何となく「GMPは性格を悪くする」という方向に動いているように思えてならない*2。「性善説に進めるためのGMP」があってもいいんじゃないか、とそう思う次第である。

優良企業、一般論として言えば、「普通よりも優れた会社」のことであろう。しかし、製薬企業の中に不始末をしでかす会社が出てきて以来、「不始末や違反をしない、まっとうな普通の会社」は良い企業に分類されるんじゃないかと思う。製薬企業、元々がヒトの健康や疾病に関わる生命産業であることも考え合せれば、「ヒトの健康を害さない(そのリスクが無い or 極めて低い)会社」であれば、優良企業と言っていいんじゃないかと思うのである。

一方で、最近の規制動向は、むしろ問題企業にフォーカスし過ぎたあまり、ここで言うごくごく普通の“優良企業”に負荷をかけ続け、「本当にそこまで必要か?」という疑問さえ投げかけるのである。“弱い物いじめ”と言ったら叱られますかね。一歩間違うと、マイナス効果に至ってしまうのではないかと懸念する。行政として本来求めていた(期待していた)ことがズレ、想定外の事態に至ってしまう。そういう風に考えたことはおありであろうか。性悪説が性悪化に変貌してしまう。そんな気がしてならない。あくまで個人的感想であり意見にすぎません。

個人の学力や能力については、その個性に合わせて「褒めて伸ばす」というやり方がある。個人でも会社でも、悪い所は目につきやすい。だからと言って、欠点や短所ばかりを責めて改善を図るということが、本当に適切なやり方なのですかね。逆に、個人でも会社でも、傍目にも、まして自身では気づきにくい良い所も多々あるはずである。みんなと違うと言うことは、欠点でも短所でもなく、個性であり、長所なんじゃないでしょうか。それを伸ばすということだって考えられるはずである。ただ、それには、周囲の理解が必要だし、理解のためには、根底に柔軟性という状態が必要と考える。GMPについては、「褒めて伸ばす」が必ずしも功を奏するとは思わないが、そういう手だってある、ということを認識し、場合によっては良い手段かもしれないと思ったりする。


第11章:規制強化により査察や監査のレベルは上がったかも?
前話の前編から規制強化に対して冷たい言葉を投げかけているが、確実に良い点がある。率直に申し上げるが、委託者による監査や行政査察のレベルは確実に向上した(少なくとも傍目にそう映る。実態としてはかなりバラツキがあるようだが・・・)。そのため、指摘事項さらには違反者を見つけ出す能力は向上したと言える。ただ、それに伴い、会社(製造所)のGMPレベルが上がったか否かは???でしかない。まぁー、監査や査察を受ける立場からすれば、(どうでもいい、しょーもない指摘の対応も含めて)よりキツイ状態になったとも受け取れるが、製品の使用者である患者さんの立場からすれば、特にマイナスとすることも無いわけで、遠回しながら「GMPの三原則」*3に掲げられる品質リスクは低減したとも言えますね。


第12章:上手くいった事例とか、ミスマッチさせない事例なんか、どうですか?
各種のアーティクルや研修会の講演などで発表される内容のほとんどが、不備の指摘じゃありませんか? それはそれで、失敗事例から学ぶという意義はありますけど、逆パターンがあってもいいんじゃないですか。特に、厚生労働省、地方薬務課やPMDAといった行政からの講演であれば、「こんな具体的かつ有効な方法でやっている会社(製造所)があります。」と紹介してくれれば、「なるほど、そんな簡単なやり方でもOKなんだ。それならうちでも出来るなー。」と同調してくれる会社(製造所)もあるんじゃないかと思うんですよ。

ハッキリ言いますが、製薬企業からの講演も“事例”として講演してくれる会社さんって、ほぼグローバル企業と言ってもよいほどの大手さんですよね*4。大手さんのやっていることは貴重ですし、それはそれで勉強にはなりますけど、本音で言えば、「大手さんだから出来ることで、うちじゃ無理だなー」と思う会社さんのほうが多いんじゃないですかねー。もっとハッキリ言ってしまうと、受講者が出張報告書や報告会で上司に伝えたところで、上司からは「●●さんは凄いな、さすがだね。でもうちじゃ無理だし、そこまで必要ないと思うよ。」で終わるんじゃないでしょうか。ならば、事例紹介の意義を強調する形で、「実際の運用に際しては、御社規模や組織に依存する部分もありますが、規模や組織に無関係な本質部分にフォーカスし、(具体的に)これとれこれを最低限として実施する、というやり方もありと考えます。」とアドバイス込みで説明してくれたらいいのになー、なんて思うんですよ。そんな、ミスマッチを起こさせないような紹介と説明が、大手さんの力量なんじゃないかと言ったら叱られますかね。

前編で申し上げたように、同調圧力に弱い日本人を逆手にとっての、こんな対応も有効なんじゃないかと思うのである。


第13章:柔軟な発想を培うために、本質を見抜く力を養いませんか?
査察や監査で指摘されたことに対して、提案通りにやる必要はないと思っている。まして、セミナー等で得た情報や知識を真に受けたようにそのままやる必要などないと思っている。ただ、いずれの場合であれ、その“言われた ”and/or“ 知った”ことの本質、医薬品としてのリスクについては、真剣に熟考していただいた上で、貴社(貴製造所)としてベストと判断した対応をしていただきたいと願う。やり方は、製品や設備といった対象で変わる。ただ、目的とする本質は変わらない。構築だ、改善だ、なんだ、と言って“事を起こす”のであれば、最も効率的かつ効果的にやったほうが得策、ならば本質を突くことなんじゃないですか。そのためにも、柔軟な発想を養ってみては、いかがですか。

薬業団体での研究資料や研究会、厚生労働科学研究、厚生労働省からのガイドライン等、それに費やす情報量や労力は理解しているつもりである。しかしながら、期待する目的が、ときにBlind Complianceとも言える“従順さ”を強いてしまったり、最悪の場合、目的から逸れた解釈や都合をし出す者まで出て来る。何でもそうであるように、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」となってしまっては意味がない。至れり尽くせりを望む聴講・受講者側に問題がある(多い)ことも理解しているつもりであることを前提として言わせて貰えれば、至れり尽くせりは、有り難いと同時に、ときに“過保護”ともなりえ、“考えさせる”ことを失せさせてしまっているように思える。なぜそうしているのかを自身に“考えさせる”、現場の状況と製品の品質に則した、妥当性のある的確な“柔軟性”は残して欲しいと願う。

正直に、丁寧かつ慎重に作業している現場よりも、GMPコンプライアンスという掛け声が尊重されてしまう現場やQuality Cultureとこれ見よがしに旗を振る会社って何なんでしょうか。もっと現実を見据え、使用者である患者さんにとっての品質って何なのか、本当の意味での品質の保証って何なのか、原点に戻って考えてみませんか? 誤解回避のために言っておきます。柔軟な発想とは、好き勝手にやることではありません。本質を失わない限りは、ベストと思われることを、既成概念や常識・良識に捕らわれずに自身で判断することを指すものだと思っている。


終章
冒頭で「読み始めたら、ザーッとでも良いので最後までお読みください。」とお願いした理由をお分かりいただけたであろうか。GMPを勝手に解釈しても良いだとか、SOP記載通りに作業しなくとも良いだとかを言っているのではない。米国cGMPがわざわざ “current” としているのと同じで、GMP自体が科学の進展や技術の進化に伴う時代の中で移り変わっていく可能性があるのではないか、現在使用しているSOPに誤解を生む表記がないのか、承認書記載事項に合わせて適切に改訂されているのか、さらには作業自体の改善を図る余地はないのか、等々、何も考えずに盲目的に行動する(まさにBind Compliance)のではなく、冷静に先を読んで行動する柔軟性が求められるとの思いで綴ったものである。

ただ、柔軟な運用に必要なことは、“ことの本質”を理解し、その本質を踏まえた上で、的確、適切に、かつ適時アッデートしていくことである。アップデートは、改善・改良の結果でもある。そして、アップデートせずに「現在のままで大丈夫、まだ問題ない」といった先送りは、世の中の“通常(ふつう)”にマッチせず、第三者からすれば、「時代遅れ」や「後退」を意味することに繋がる。筆者がタイトルとして付けた「Flexible GMP」の意図は、コレを言いたかったのである。

ちなみに、筆者が心がけていることを以下に列記する。別に読者に押し付ける気などない。単に、私がそう心がけているというだけであるので、その点はご了承ください*5
① 先入観を持たないこと
② 推測や憶測で判断しないこと
③ 一人だけの意見や情報に流されることなく、多方面からの情報を基に分析すること
④ 自己責任を認識した上で評価し、判断すること
⑤ 頑なに自分の意見にこだわることなく、自己否定も含めて柔軟に考え、行動すること
 


では、また。See you next time on the WEB.



【徒然後記】
ドマさん執筆秘話
この「ドマさんの徒然なるままに」、勝手なことを書いているので、さぞかし“お気楽”な気分で書いているんだろーなー、とでも思われているに違いない。正直に言います。滅茶苦茶苦労して書いています。
元々の趣旨と言うか、意図として、変に教育的な押し付けにならず、また一方では、変にふざけた内容にはならず、ということがある。要は、クスッと笑えるものの、何となく同意でき、何となく役に立ちそうといった内容が一部に含まれる、ことを意識している。
ときに一気呵成に書けることもあれば、悩みに悩んだ挙句、終いには別タイトルに変更し全く別の内容にしてしまったり、と結構苦しんでいる。そもそも、第51話の徒然後記「ポポとナナ」で紹介したように、筆者、特に文才があるわけでなく、“書き物”は苦手なほうである。
そんなこともあって、このGMP Platformの右横列にあるアクセスランキングが気になったりする。書いている最中は、「あんなものは気にしない」と自分に言い聞かせているものの、苦しんだものほど気になってしまうのである。
読者の皆さんは、どの話が苦しんだものか、どの話がチャチャっと書いたものかの区別は出来ないかと思うが、執筆者としては、「アレはねー」という本音があるのである。
ときに、そんなことを想像しながらお読みいただくのも面白いかもしれません。
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*1:『勝手にGMP論』シリーズ、第1弾から第10弾までは、以下の通りである。
第1弾:第5話「X+Yの悲劇
第2弾:第6話「Psの悲劇
第3弾:第9話「Sustainable GMP
第4弾:第10話「世界に一つだけの GMP
カミングアウト版:第14話「Into The Unknown
第5弾:第18話「ミッション:ポッシブル
第6弾:第27話「GMPの質・前編」および第28話「GMPの質・後編
第7弾:第32話「品質道
第8弾:第40話「教育訓練・前編」および第41話「教育訓練・後編
第9弾:第44話「Continued QA
第10弾:第55話「Flexible GMP・前編
 
*2:(天の声)お前の性格の悪さは生まれつきじゃ。GMPとは関係ないわな。
(筆者)あんたがGMPを創ったんか?
(天の声)どういう意味じゃ? 
(筆者)あんた、性悪説そのものじゃないか。
(天の声)はい、天罰でーす!
(筆者)ギャーーー!
 
*3:「GMPの三原則」は以下のとおり。
①人為的ミスを最少限にすること
②汚染および品質低下を最少限にすること
③信頼性の高い品質保証システムを構築すること
 
*4:グローバル企業かどうかはともかくとしても、ほとんどの場合は“大手さん”ですよね。少なくとも、(持ち回りの順番ということはあるかもしれないが)他社よりも優れているということでの講演依頼であり、それを自負しているからこその受諾で紹介ですよね。
 
*5:(天の声)「心がけている」ってウソだろ?
(筆者)ウソじゃないよ。あくまで心がけてるってことで、出来ているとは言っていないよ。
(天の声)ふーん、口だけは達者な奴じゃ。
(筆者)反省も自覚もない、あんたに言われたくないわ。
(天の声)追加の天罰でーす!
(筆者)ギャーーー!
 

 

 

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