WFI製造プロせすへの思い【第13回】

1.RO主体の改正
 2017年4月より改訂された欧州薬局方(Ph.Eur.) “Revised draft monograph: Water for Injections (0169) ”によると、“Reverse osmosis in Ph. Eur. monograph Water for Injections ”という表記になっています。
 このシリーズ9「ROによる無菌水の製造の試み」では、日本でWFI製造にROを利用した時の状況を記述しました。
 このPh.Eur.による改正内容は、日本ではPyrogenを分離困難なことが実証されたROを主役に用いてWFIを製造することになり、現在のWFI製造現場の現実との間には、大きなギャップが存在します。
 このシリーズ12「日本薬局方にRO又はUFとの収載に対する外国からの誤解」で触れたFDA関係者と同様の認識から、膜のpore sizeのみを重視しています。
 彼らは、WFIファイナル機器としての要件に、ROが適うのかを、詳細に検討はせず、最も精密な膜としてROを蒸留器に代わる手段と考えています。
 日本の現場の先人達は、筆者は尊敬の念を込めこう呼びますが、RO膜モジュール構造を詳細に検討し、WFI製造に適する改良をも進めましたが、結果としてRO水によって無菌水を継続して得ることはできませんでした。無菌水が得られないとWFIファイナル機器として利用は適いません。
 一方、日本当局からPDG(三極薬局方検討会議)において、何度も日本のWFI製造現場の情報が開示されたにもかかわらず、この情報がEU当局に正しく伝わらず、このような不充分な改訂内容になったこと、誠に悔やまれます。
 この例のように、行政当局の認識と製造現場の現実とのギャップは、公にされることは少なく、現場にいた若い頃、疑問を持ちつつ日々悩んでおりました。歳を重ねこのコラム欄を担当させてもらい、次世代のWFI現場を担う方々が持つことになる素朴な疑問点を、少しでも解消できればと思い、敢えて、他国の薬局方制定内容へも意見を言わせてもらいます。

. EU当局のこだわり
 さて、EU当局はこれまで“depend only to the distiller”と、蒸留器によるWFI製造にこだわり続けてきました。
 CPMP/CVMP(欧州薬局方品質と査察専門調査委員会)January 2002 の見解では、
"The meeting concluded that there was insufficient evidence at the present time to support the use RO to produce WFI and in view of the safety concerns, WFI should be prepared only by distillation as laid down in the Ph. Eur.”
 「現在、WFIを生産するためにROの使用を支援するには証拠が不十分であり、安全が懸念され、ヨーロッパ薬局方(Ph. Eur.)において、WFIは蒸留器だけにより準備されるべきであると会議は終了した」 (以上、訳文は筆者)  という見解を示していました。 
 この調査委員会が発足したニュースを知ったとき、この調査委員会に期待しましたが、残念ながら、前述のような結末だったのです。
 日本では、厚生科学研究によって膜によるWFI製造を調査・研究した結果、1988年に日本薬局方第十一改正第一追補におけるWFI製造法の改訂へ繋がることになったのですが、これとは大きな違いがありました。

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