GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第54回】

2022/03/04 品質システム

QA活動、形式について。

QA活動

1.形式

 SOPや記録の形式にこだわっていないだろうか。ヒューマンエラーが起きたとき、SOPを読んでいない、理解していないとの話は多い。しかし、現場において読まなければならないSOPが多い。その内容も重複することも多い。製造手順、装置の操作手順、始業点検の手順、清掃、洗浄の手順と査察や監査で要求され、形式的に作成されたSOPを揃え、満足していないだろうか。その内容に必要なことが記載されているのか確認が必要である。その作業に誤りがあった時に逸脱となり、品質に影響するのか検討しなければならない。ヒューマンエラー発生時に、手順からの逸脱としながら、品質に影響ないと判断するなら、そのSOPは、本当は必要ないかもしれない。作業現場からSOPに詳細まで手順の記載を求められることも多い。査察や監査で、その手順のSOPの制定を求められることもある。作業をするにあたり、誰でも作業ができるようにSOPを作成するようにとの意見もあるが、新人がその作業をすることを前提にSOPを作成する必要はない。新人がその作業をするにあたり、当然、OJT等の教育訓練を実施することになる。OJT実施の際に必要なマニュアルなら教育訓練のプログラムや要領書などとして備えることで十分である。ヒューマンエラーの多くは、新人のエラーよりベテラン等が品目による違いを忘れての思い込みや勘違い等で起こることが意外と多い。教育訓練でのスキルの認定と確認すべきSOPの限定に取り組むことがヒューマンエラーの防止の有効策である。
 記録においても、重複しているケースは多い。例えば、逸脱処理で原因調査をして、CAPAに移行しつつ、再度、調査結果を記載していないだろうか。CAPAの是正措置の実施に当たり変更管理としていないだろうか。変更管理を実施するにあたり、リスクマネジメントとして、品質への影響を2つの記録に記載していないだろうか。1つの行為をあたかも2つの行為を行ったように記録を作成することはデータねつ造と見做しかねない。逸脱からCAPAに、CAPAから変更に、変更からリスクに、2つのシステムで展開させる場合、原因分析や是正措置、リスク分析などをどちらの書式に記録するかを明確にしないと、記録が重複することになってしまう。記録をきれいな状態にするため、案文を作成して記録用紙に清書することもあるかもしれない。その場合、データインテグリティの確保のために、案文を生データとして保管する必要がある。記録は、本来、作成した時点で成立する文書であり、SOPのように、照査、承認を経て制定されて、確定する文書とは扱いを区別しなければならない。変更管理や逸脱処理において、調査不足があり、追加調査する場合などは初回の調査結果と追加の調査がされたことを記録する必要がある。データインテグリティは、その都度、その都度、記載することを求めている。
 査察や監査で記録様式が古いものを使用していて、指摘となることがある。その都度、システムから書式をダウンロードして使うことになっていても、現場でその都度の印刷が面倒で書式をコピーして使うこともある。様式の改訂を連絡してもついそのまま使用したと現場の回答になり、CAPAとしても、連絡や教育訓練の徹底で済まされることになろう。その様式の変更は品質へ影響を及ぼすことになるのだろうか。品質への影響を考え、形式に囚われず、文書管理が混乱せず、担当に負担のない管理が必要である。GMPは文書管理が重要であるが、それは品質を担保するための証拠としての記録である。

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執筆者について

中川原 愼也

経歴

GMPコンサルタント
1984年神奈川県庁に入庁。1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)締結の際のEU調査、2005年製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
 ・平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
 ・平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職後、医薬品原薬輸入商社、製薬企業、コンサルティング企業で品質保証やGxPコンサルタント業務に携わる。2025年6月よりGMPコンサルタントとして独立、現在に至る。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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