ゼロから学ぶGMP【第10回】
5-7第10条 製造管理
5-7-1 製造指図書
第1号は指図書の作成に関する事項です。これまで述べてきたように「製造指図書原本(Master Bach Record)」の承認及び保管は品質部門の責務であり、製造部門の長(又はあらかじめ指名された責任者)が原本の正確なコピーに、変動事項(指図年月日、原料のロット指定、製品のロット番号等)が記入された製造指図書をロットごとに発行することになっています。
指図書は工程ごとに分割されることもよくあります。例えば錠剤等で、包装形態が異なるもの(例えばPTP包装と瓶入りのバラ包装)については、錠剤バルクまでは同じ指図書で製造され、包装段階で、それぞれの包装工程の指図書を発行して、作業を進めます。その場合は、それぞれのロット番号を割り当てる必要がありますが、元の錠剤バルクのロット番号と関連付けておく必要があります、多くの場合は錠剤バルクのロット番号に枝番をつけことで対応しています。
指図書に記載すべき事項としては施行通知に述べられている通りですが、これ以外にも、使用すべき「原料」や「資材」のロット番号や製造に使う機械類等(複数の同種機械がある場合は必須)についても指図しておくことが望まれます。また、「変更管理手順」に基づいて変更する場合には、製造所の手順書に基づいて(通常変更開始後3ロット)、変更箇所を指図書に明記するとともに、変更ロットであることが誰が見てもわかるようにしておくことが大事です。またバリデーションが必要とされる比較的大きな変更の場合は、それに伴う工程検査項目の追加を指図するとともに、バリデーションロットであることを明記する必要があります。
5-7-2 製造と製造記録書
第2号には製造指図書に従って製造することとあります。あたり前の話ですが、指図書が的確に書かれていて、機械等の取扱いに関する手順書が作業現場に配布されていなければ、指図書通りに製造することはできません。また、逸脱等の発生により、作業が中断したときは、場合によっては通常と異なる作業が発生することがあります。その場合は、新たな指示や指図書の発行が必要になります。よほどの緊急事態でない限り、文書による指示や追加の指図書の発行を待たず、口頭指示のみで作業を開始してはいけません。このような場合には作業員は責任者の文書による指示がなければ、作業を行ってはならないことを肝に銘じておくことが大事です。GMPにおいて、これは基本中の基本です。また責任者も含め、このことに関する教育訓練を十分に行っておく必要があります。このことが大事であることは案外意識されていませんが、製造所の監査等ではこの種の不適合はよく観察されます。このことを怠ることはヒューマンエラーの発生のリスクを自ら負うことになりますので注意が必要です。
また包装作業については製造前には製造ライン上に、前に使用した資材や製品等が残存していないかを確認しておくことが、異種製品の混入を避けるために必須の手順です。これは通常ラインクリアランスとよばれ、通常手順書に付随されているチェックリストに基づき確認を行います。このことはGMP省令には具体的には述べられていませんが、PIC/S 第5章のPRODUCTION(Packaging Operation 5.45)には以下の記載があります。「包装作業を始める前に、作業区域、包装ライン、印刷機及び他の装置は清浄であり、また以前使用されたいかなる製品、原料又は文書も、これらがもし、現在の作業に必要とされない場合は残存していないことを保証するステップが取られること。ラインクリアランスは適切なチェックリストに従い実行されること」
第3号は製造記録に関する記載です。実際には製造記録は、指図書と一体化させていることが多く、製造指図記録書として運用している製造所がほとんどです。通常ページの左半分に指図が、右半分に記録をつけることになっています。そこに記載されるべき事項は施行通知の逐条解説(薬食監麻発083第1号 平成25年8月30日)に記載されていますので参考にしてください。その中に「上記のほか、製造作業中に採られた措置」という項目がありますが、これには何らかの逸脱があった場合にそのことを記載することも含まれます。通常は逸脱が発生した工程の記載と、逸脱報告書の表紙部分のコピーを製造記録書に添付しておくことが、後々どのような経緯で、また誰の責任で逸脱処理がなされたかをロットに結び付けてわかるようにしておくために有用です。このことは他の項目の「製造工程中に行った製造部門においての試験検査の結果及びその結果が不適であった場合において採られた措置」や「品質部門による試験検査の結果が不適であった場合において採られた措置」とも関係します。
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