医薬品品質保証こぼれ話【第47回】

2021/09/24 品質システム

医薬品ロスについて。

医薬品ロスと安定供給

9月(2021年)に入っても後発医薬品の“承認書と製造実態の齟齬”による医薬品回収があとを絶たず、安定供給の問題が収束に向かう気配がありません。9月3日に報道された次の3つの事案の回収理由は乾燥工程や粉砕工程などの工程管理に起因するものであり、いずれも、実施した手順が承認書の内容と異なっていたことが自己点検等により確認されたとのことであります。高田製薬、ニプロなど5社のアセトアミノフェン製剤の回収は“香料の粉砕方法”が、日本ジェネリックのエナラプリルマレイン酸塩製剤のケースは“乾燥工程と粉砕工程”が、それぞれ承認書記載の手順との間に齟齬が認められたとのことです。また、長生堂製薬と日本ジェネリックのアイスフラット懸濁用配合顆粒の場合は、造粒工程における“乾燥の実施条件”が承認書記載の内容と異なっていたことが回収の理由とされています。

本講座「第41回:医薬品の安定供給と課題」において、医薬品の品質を確保するためには生産の様々な工程における要件(法的、科学的)を満たす必要があり、そのためには各工程においてそれぞれに周到な管理が求められ、一つ間違えば回収につながるトラブルを招くことを述べました。上記の3つの事案は正に医薬品製造に求められる多様な工程の管理が適法・適正に実施されなかったことが回収の理由となっており、医薬品製造の難しさを物語っていると言えるでしょう。医薬品の品質を確保するためには、生産段階のGMPを基礎とした周到な業務推進のみならず、工程の開発段階における様々な検証などを含め、一貫して極めて精緻な対応が求められます。加えて、PIC/S-GMPをはじめとする先進の規制への整合化といった考えの下に、新たに追加される要件(遵守事項)も少なくなく、それへの対応も簡単ではありません。

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執筆者について

浅井 俊一

経歴 1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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