製薬用水の実践知識【第9回】ROとUFについて(2)

5.無菌化ろ過としてのRO膜
 RO膜による無菌化ろ過は、この脱イオン装置としての役割とは分離して考えます。分けて考えることによりその特徴が見えてきます。
 除菌用カートリッジフィルタ(孔径アブソリュート0.22μm)よりも更に目開きが細かいRO膜は、膜1次側へ流入する微生物を阻止します。
 RO膜によって、無菌水製造を試みるのはごく自然であって、1970年代から国内の製薬会社でこの試みが実施されました。
 用途としては滅菌精製水製造であり、RO膜透過水は日本薬局方無菌試験を適合し、パイロジェンについても注射用水管理値をクリアしました。RO膜により、連続的に実質的な注射用水製造が可能となったのです。
 この背景には、1970年代初め国内製薬会社において、蒸留器による注射用水製造についてある種の不安材料があったからです。
 現実に、蒸留器を構成する蒸発缶の構造上および製作上の不備から、供給水が蒸留水へ混入するトラブルが発生しておりまして、蒸留器の前段にて、供給水中からの微生物負荷を低減する必要性が検討されました。
 しかし、その供給水となり得るRO膜透過水を、常に無菌試験に適合する状態を継続的に維持するための作業、その検証(バリデーション)実施は、中々困難を極めました。特に、膜透過水側 (ピュアサイド)の汚染防止は最善かつ注意深い管理が必要でした。
 極端な例では、毎日採水停止後ピュアサイドを殺菌剤で消毒するケースもありました。また、膜モジュール全体に対して殺菌剤が確実に行き渡ることを配慮し、高濃度の殺菌剤を浸透させると、殺菌剤を押し出し、リンスして殺菌剤が抜けたのを確認するまでには、一昼夜を要するなど多くの問題点を抱えていました。
 特にスパイラル型RO膜モジュールは、平膜を接合している末端部分に液溜まりが存在しやすく、モジュール内角の部分にはエア溜まりが発生しやすいこと、透過水集合パイプ内部においても溜まり部が存在しやすく、膜間にはスペーサーが存在し、洗浄し難い構造になっており、また出荷時から汚染が残留していることも懸念され、RO膜を無菌化ろ過として使う場合には、指摘したような問題点があることを認識する必要がありました。

図5 RO膜モジュール溜まり部
 
バリデーション:あらかじめ目論んだ性能が発揮されているか文書で記録確認すること。
消毒:殺菌と同義であって衛生工学的見地から微生物数を低減する行為。
 
 当時、新しいRO膜モジュールに取り替えを実施したところ、取り替え前はクリアしていた無菌試験適合がクリアできなくなり、解決に1ヵ月を要するという大問題になったトラブルも経験しました。
 つまり、平膜を透過した瞬間は無菌試験に適合するRO膜透過水が生まれたのであろうが、平膜を透過した瞬間から汚染の機会が存在するのです。
 これは蒸留器において、蒸留水が凝縮器内で生まれた瞬間に汚染機会を得るのと同様であって、この汚染機会をいかにして低減するかが、注射用水製造における重要課題でありました。
時が経ち、耐熱用RO膜が国内外で販売され、現在も利用され、熱水殺菌できるという初期の目的は達成しましたが、市販される耐熱用RO膜は、先に述べた常温用RO膜モジュールと構造自体は大差がなく、膜1次側は殺菌が期待できるが、膜2次側を含め確実に殺菌・洗浄ができる無菌化を目的とした膜モジュールには至っていない現状があります。

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