GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第47回】

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CAPA

1.人の振り見て我が振り直せ
 「人の振り見て我が振り直せとは、他人の行動を見て、良いところは見習い悪いところは改めよということ。」1)人はなかなか他人の行動を見て、自分の行動を見直すことができない。CAPAの予防措置において、情報の共有化が重要である。ヒューマンエラーは、同一の者が繰り返すより、同様事例と思われる事象が各部署や他の者が起こすことが多い。GMP委員会等で、逸脱事例の報告がされることは多いが、他部署の者にとっては、他人事であり、場合によっては、「何であんなことしたんだ。」と馬鹿にされて終わりかねない。人の不幸は蜜の味ではないが、優越感に浸れるのだろう。ひどい場合は、誹謗中傷の的になることさえある。
 CAPAの予防措置を考えるとき、事前にリスクの発生を想定することは難しい。しかし、他部署や他工場で起きた事象が自身の部署や工場で起こるかもしれないと考えることは容易である。GMP等の研修会で、当局が指摘事項や回収事例等を説明するのは、同様な事例が発生しないよう注意喚起としてである。工場内で小火が発生し、原因はたばこの火の不始末だったので、その周辺を禁煙とした場合、禁煙の措置は再発防止対策であるので、是正措置となる。工場内には、別に倉庫があり、小火等は起きたことがないが、同様に禁煙措置をすれば、未然の防止対策であり、予防措置となる。

他人の起こしたヒューマンエラーを愚かな行為と思わず、自分にも起こることを認識することが予防措置となる。自身に起きないと根拠のない自信を持つだけでなく、場合により、誹謗中傷や叱責までに至ることがないような環境作りが必要である。もし、誹謗中傷や叱責などが繰り返される環境になると、ヒヤリハットなどのヒューマンエラーの事象が報告されることがなくなり、情報の共有化が図れなくなる。情報の共有化が図れなければ、予防措置が十分に行われず、ヒューマンエラーが多発することになろう。ヒューマンエラーは、何故か、同様事例が連鎖反応のように続けて起こるものである。多くのヒューマンエラーは過去に同様な事例がある。過去の事例を学ぶことにより、十分、ヒューマンエラーの防止ができる。
 災害対策として「想定外」の言葉を聞くことがある。例え、100年に一度であろうと、過去に同様な災害が発生していたことが多い。100%完璧な防災対策ができないかもしれない。しかし、その被害や損害を最小に食い止める方策はある。リスクマネジメントとは、100%発生防止を目指すわけではなく、その品質への影響が容認できる範囲に低減させることにある。そのヒューマンエラーが招くリスクを低減化させるために、予防措置の徹底を図らなくてはならない。作業者一人一人が人の振り見て我が振り直せば、予防措置の徹底が図れることになる。その環境づくりこそ必須のものである。

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