医薬品の技術移転のポイント【第4回】

2021/07/30 品質システム

ICH Q8を一緒に目を通してみましょう。

ICH Q8 製剤開発に関するガイドライン(通知)

原薬については「ICH Q11/原薬の開発と製造(化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)が出されています。今回は取り上げていません。

 医薬品産業には規制が多いです。その規制をまずは理解することがスタートになります。
制定/改定  国会 内閣 各省大臣       局/課長       GMP適合性調査等
憲法 法律 政令   省令  告示 通知 事務連絡  PMDA指摘事項
         薬機法   GMP/GQP省令 GMP施行通知    都道府県指摘事項          
          薬事法施行令  日本薬局方(JP)  GMP事例
               薬事法施行規則 ICH Q8,Q9,Q10,Q11 
                  PIC/S GMPガイドライン(を活用する際の考え方) 
                  原薬GMPガイドライン 
    大枠                                詳細
 どこまでが法律でどこからが法律でないかの判断は難しいですが、一般には官報告示以上が法律の広い意味での範囲ではないでしょうか。例えば、JPの誤字脱字についても官報告示で行われます。 通知以下の運用については当局に任せられています。通知の内容と違っていても運用が優先されているようです。
 PIC/S GMPガイドラインの扱いは事務連絡ですが、ガイドラインにある要求項目についての適用の考え方は下記の事務連絡において出されています。
「GMP省令を踏まえ、製造業者等の対応において許容できないリスクがあると判断された場合は、必要な指導にあたりPIC/SのGMPガイドラインにある手法を求める場合もあることから、品質確保の観点から、PIC/SのGMPガイドラインを踏まえ、製造業者の自らの手法においても同等以上の品質が確保される根拠の妥当性について十分に確認しておく必要がある。」
 許容できないリスクの判断はPMDAや当局が行います。また同等以上かどうかの判断もPMDAか当局です。6つのギャップ以外のギャップについては当局に委ねられているということです。
 よって、通知以下についても順守が実質上求められていると考えます。実際、PMDAの指摘事項において下記のようなPIC/S GMPガイドラインの項目(日本のGMPには明確には求められていない)指摘がなされています。
「洗浄するまでのホールドタイムが7か月以上と長く、分解物による洗浄への影響が考慮されていない。」
 日本のGMPでは洗浄に関するホールドタイム(ダーティ/クリーン)までは明確に規定されていません。
 GMP不備により、製造業の許可が与えられない、GMP適合性調査が適合せず新製品の承認が遅れたり、製品回収が自主回収との名目で実施されています。日医工の約80品目の製品回収は無通告査察でのGMP不備が発端だと言われています。そのため、実質上は当局のGMP適合性調査時の指摘事項(PMDAが講習会で紹介した指摘事項&改善命令)の順守が求められていることになります。Q8のガイドラインもその背景でできるだけ反映していくことになります。
 これらの法律~指摘事項まで多くが発出されています。すべてを精読する必要はありません。どこに何が書いてあるかを知り、必要な時にそこに戻って読み直すことです。「誰々が言うから」を鵜吞みせずに、その人が言っている根拠の原典をぜひ自ら目を通して理解されることです。手間はかかりますが、考えることができるようになります。すべてを暗記する必要はありませんが、どこに何が記載されているか、どのような通知やガイドラインがあるかを知っておく必要があります。自分のレベルが高くなるにつれ、読み取れる情報量も増えてきます。ただ、Q&Aや事例集、GMP指摘事項は精読しておくことを推奨します。なぜなら、当局の考え方やGMPをどこまで実施するかがわかってきます。それがわかると、あなたが考え判断されたことは当局の判断と大きく異なって来ません。そうなると、“わかった”ことになります。この機会にICH Q8を一緒に目を通してみましょう。

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執筆者について

脇坂 盛雄

経歴 1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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