ラボにおけるERESとCSV【第76回】

2021/04/02 施設・設備・エンジニアリング

望月 清

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7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■ LLL社 2019/6/11 483 その3/3
施設:原薬と添加剤


■Observation 3
すべての供給者を以下の観点で評価しクラス分けするように貴社の手順書に規定されている。
・性能評価
・製品品質の重要性
・定期監査の頻度
しかし、6年ちかく監査していない供給者があった。
 

★解説-1 社内規定について:
GMPに係わる社内規定は法令(法律、政令、省令)と同様に拘束力があるので、その規定に従っていないと当局査察において指摘される。守れない社内規定は改廃が必要である。

例えば、CSVのガイドラインである「医薬品・医薬部外品製造販売業者におけるコンピュータ化システム管理ガイドラインについて」(薬食監麻発 1021第11号 2010年10月21日)は国内において広く普及している。このガイドラインは良く出来ているので、その内容をそのままCSVの社内規定にすることがよく見受けられる。

一方、このガイドラインの総則に以下の記載がある。
「このガイドラインに示した管理方法は標準的な例を示したものであり、これに代わる方法で、それが同等又はそれ以上の目的を達成できるものである場合には、その方法を用いても差し支えない。」
ガイドラインにおける技術的内容をCSVの社内規定に丸写しするのは問題ないが、上記の記載をCSV社内規定に入れていないことが散見される。もし、この記載をCSV社内規定に入れていないと、社内規定以外のCSV方法は否定されてしまう。GAMP5も提唱しているように、CSVは合理的であるべきある。合理的に信頼性を確保できる他のCSV方法も採用できるように、CSV社内規定に上記の記載を入れておくことをお薦めする。
 GAMP5:https://www.ispe.gr.jp/ISPE/07_public/07_01_19.htm

★解説-2 供給者監査に関するFDAの指摘:
供給者監査に関するFDAの指摘を以下に紹介するので参考とされたい。

・  2016/1/12 ノルウェー (483)
  ◆  バイアル供給者を規定の頻度で監査していない
・  2016/1/15 中国 (483)
  ◆  原料供給者は訪問監査する規定だが、書面監査しかしていない
・  2016/7/8 メキシコ (483)
  ◆  供給者評価の規定がない
・  2016/9/14 中国 (483)
  ◆  原薬供給者やサービスプロバイダーのGMP適格性評価をしていない
・  2017/1/13 韓国 (483)
  ◆  規定に従って材料供給者を評価していない
・  2017/1/20 中国 (483)
  ◆  供給者の評価規定がない(COAの信頼性検証)
・  2017/3/10 米国 (483)
  ◆  供給者評価手順が不適切(頻度、書面監査、訪問監査)
・  2017/4/5 米国 (483)
  ◆  供給者評価手順が不適切(COAの検証)
・  2017/5/5 インド (483)
  ◆  供給者監査を実施していない
・  2017/5/10 カナダ (483)
  ◆  CROを監査したが生データを確認していない
・  2017/9/8 中国 (483)
  ◆  高リスクなのに訪問監査を実施していない
・  2017/9/22 中国 (483)
  ◆  供給者評価が不適切
  ◆  COAの信頼性を定期的に検証していない
・  2017/12/13 インド (483)
  ◆  オンサイト監査結果に対する供給者返答を得てない
  ◆  供給者の適格性評価方法が不適切である
  ◆  内部監査の手順が不適切である
・  2018/1/11 インド (483)
  ◆  外部委託者と品質協定(OOSの連絡など)を締結していない
  ◆  供給者のCOAを適切な頻度で確認していない
  ◆  供給者のCOAをテストせずに供給者認定している
  ◆  供給者のCOAを検証する頻度を規定していない
  ◆  訪問監査の基準がない
  ◆  訪問監査の頻度を規定していない
・  2019/6/11 日本 (483)
  ◆  すべての供給者を評価しクラスわけするよう規定されているが、
    6年ちかく監査していない供給者があった。

 

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執筆者について

望月 清

経歴 合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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