医薬品品質保証こぼれ話【第27回】

仕組みと仕掛け(クラスⅠ回収に関連して)
福井県の医薬品受託製造所において、死者が出る重大な品質問題が起き、連日、関連の報道が行われています。2005年に薬事法が改正され、医薬品の製造販売に関する業態が製造販売業者と製造業者に二分され、かつて、品目の製造承認権を保有していた多くの製造所が、新法下においては、品目の承認を持たない受託製造に転じ、製造販売業者が医薬品の品質と安全に対し最終責任を持つ形となり、以前より、品質・安全への管理監督体制の強化が行われました。また、製造・品質管理の基準(GMP)も、ハーモナイゼーションが進行し、PIC/S-GMPに整合させるべく整備が進められ、先日、改正GMP省令のパブコメが発出されるなど、より高度で厳格な品質保証システムに移行しつつあります。
こういう状況の中、どの製薬工場においても品質システムの状況が以前よりは遥かに進化してきており、今回の重大な品質問題の発生に関しても、工場の品質システムの整備状況自体に問題があったとは考えにくいと思われます。まして、大手企業から多くの医薬品の製造受託を受けるほどであり、行政査察への適合は勿論、教育訓練などを含めGMP体制は過不足なく整備されていたものと推察されます。このことから、今回、重大な品質問題が生じた原因は、“形式上の品質保証体制は整っていたが、運用面が伴っていなかった”のではないかと思われます。では、なぜ実態が伴わない状況になっていたのでしょうか?
モノ造りには、常にリスクが伴います。医薬品に限らず、同じ製品が毎回、同じ品質で製造できるという保証はありません。例えば、使用する原料も規格は定められ、それに適合していても、物性などが毎回、全く同じということはありません。まして、医薬品は微量で高い生理活性を持つ点でほかの製造物とは異なり、その製造と品質管理には高度な技術と知識、管理手法が求められます。しかし、人間は完全ではなく、本来、失敗をするものです。同じ工程を繰り返し、生産し、試験し、出荷する安心感の中で、日々の生産に追われ集中力の欠如し思わぬミスを招くのも人間です。
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