オーナーのプロジェクトマネジメント【第6回】

 前回に続き、FSステージについて記載していく。
 
参考 以前に記載した記事の目次
1. はじめに
2. プロジェクトステージの概要
3. 何をマネジメントするか
4. プロジェクト計画に関連する主要な問題点
5. プロジェクトマネジャーの役割と責務
6. プロジェクトマネジャーの資質
7. プロジェクトで使用することば
8. 外部への依頼範囲
9. FS(Feasibility Study)ステージ【その1】

10. FS(Feasibility Study)ステージ【その2】
 (3) 概略の工期
 FSステージでの工期設定は、過去の経験に基づき行われるのが一般的である。注意するのは、主要機器の中に長納期品が無いかを調査しておくことである。中でも市場に存在しない機器や、新規開発する必要がある機器の場合には、事前にその対応を十分に検討する必要がある。もちろん納期だけではなく、コストにまで大きく影響する。
 工期とは話題がずれるが、新規開発機器の場合に、サプライヤーに対し機械的な保証をお願いするとしても、性能や機能の保証を含めることは、結果的にサプライヤーとしても見積や納期に余裕を取らざるを得ないことになる。新規開発機器のような場合、性能や機能保証をサプライヤーにお願いすることは、製薬会社のエンジニア自身でも保証できるという自信を持っている場合と考えていいだろう。逆に言えば、それだけの自信があれば、サプライヤーから機能や性能の保証を除外するという方策もあるので、無理な保証は避けるべきである。
 実施にあたってどのような形態のプロジェクトを採用するかということも重要な要素である。昨今の日本の製薬企業では、かなりのウェイトのプロジェクトを外部のエンジニアリング会社等に依頼しているのが実情である。従って、どの段階から外部に入っていただくか、それも依頼先指定でいくのか、競争入札とするのかといった構想を、FS段階から検討しておく必要がある。特に、見積金額による競争入札の場合は、競争に耐えられるだけの見積仕様書を準備する必要がある。すなわち、見積金額競争をするためには、仕様や条件を明確に規定していなければ、意味のない金額競争となる。そして、その仕様書作成を誰が行うかによって、工期に大きく影響するからである。
 過去の実績とは異なるような、複雑な工事の組み合わせではないかというかの調査も、FS段階での工期の見込みとしては重要である。例えば、現地工事のエリアが狭く併行作業が困難であるとか、海外の場合、日本におけるようなコンパクトな配置では現地工事が難しいとか、工期に影響する要素はいろいろとあり、単純に過去の実績をそのまま採用するにはいかない。
 特に、コミッショニング・クオリフィケーションの方法によっては、想定を超える工期にもなりかねないので、FSステージからコミッショニング・クオリフィケーションの方針を明確にしておくこと。即ち、古い方式だがコミッショニングを実施後に、コミッショニングとは独立してクオリフィケーションを行なう方法もある。また、コミッショニングの一部をクオリフィケーションとして参照する方式もある。参照するとしても参照できるための条件をクリアしていなければならないので、後付けでコミッショニングの結果をクオリフィケーションに参照するというわけにはいかない。また、コンピューターバリデーションと装置のクオリフィケーションとの関係をどのようにするかなど、基本コンセプトの核となる思想はFS段階でも準備しておく必要があり、予算や工期へのインパクトは大きい。これらの点については、エンジニアリング会社等でも、工期に対する甘い考えがある場合があり、非常に注意を要するところである。

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