医薬品GMP理解の第一歩【第4回】

2020/04/17 品質システム

1.はじめに

 今回から、GMP省令を基準とした品質システム要素それぞれの要点をご説明してゆきたいと思います。まずGMP省令ですが、前回お示ししたように次の9つの事項が省令における品質システム要素と考えられます。
  ①出荷管理      ②バリデーション   ③変更管理       
  ④逸脱管理      ⑤品質情報と品質不良 ⑥回収処理
  ⑦自己点検      ⑧教育訓練      ⑨文書管理
 これらの事項についてはこれまで多くの方々が論じてこられたところですので、この連載では一般的な解説は省き、筆者が「これだけは言っておきたい」と考えるポイントを論じたいと思います。今回は、①出荷管理と②バリデーションです。

2.出荷管理 

 医薬品の出荷には二段階があります。医薬品はまず製造所から製造販売業者(製販)に出荷されます。これが「製造所出荷」であり、GMP省令第12条に基づきます。次に「市場出荷」として製販より市場(卸売販売業者や医療機関)に対して出荷されます。このプロセスはGMPではなくGQP省令(第9条)に従います。市場出荷により医薬品は製薬企業から離れ、市中の物流ルートに載ることになります。

(1)製造所出荷
 製造所出荷の可否の判定は製造所の品質部門の役割です。品質部門は品質保証機能(QA)と品質管理機能(QC)に区分できますが、出荷の判定は通常QAが担当します。出荷の判定にあたり、製造ロットごとにQAが実施すべき作業は次の4点に集約できます。
  1)QCによって実施された試験検査結果が「適合」であることの確認。
    QCは試験検査結果判定書を発行しますので、それを確認することに
    なります。ちなみに、試験検査結果判定書はよく
    COA(Certificate Of Analysis)と呼ばれます。
  2)QCが作成した試験検査記録に問題のないことの確認。
  3)製造部門が作成した製造記録に問題のないことの確認。
  4)当該のロットに関わる、逸脱管理と変更管理が完了(Close)している
    ことの確認。
 以上の確認をもって、めでたく製造所出荷を行うことができます。上記の4点のうち、試験検査記録と製造記録の確認(第2, 3項)は、実作業を行う「現場」から独立した品質部門が第三者の立場で現場の作業を評価し、確認することが目的です。
 なお、製造所によっては、QCは品質部門の一部だという理由でQAが試験検査記録の確認(第2項)を実施しないケースも見受けられますが、「第三者の立場で現場の作業を評価し、確認する」必要性から、やはりQAによる試験検査記録の確認が必要であるのではないかと考えられます。

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執筆者について

小山 靖人

経歴 小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問
1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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