医薬品GMP理解の第一歩【第3回】

1.はじめに
前回はISO9001をベースに医薬品の開発から製造・品質管理全般を包括し、継続的改善を推進する指針である「医薬品品質システムのガイドライン」(ICH Q10、以下Q10)をご説明しました。それでは、GMPの分野で品質システムをどのように考えればよいのでしょうか。今回はそれについて考え、あわせてシステム監査の重要性についても論じたいと思います。
2.米国FDAの医薬品品質システム
実は医薬品品質システム(Pharmaceutical Quality System, PQS)という考え方を初めて提示したのは米国のFDA(食品医薬品局)であり、Q10に先立つ2002年のことでした。当時、このPQSとは一体なんだろうかと、業界でずいぶん議論になったことを懐かしく思い出します。それはともかく、このPQSの考え方を背景にFDAはGMP査察官向けに「システム査察」と称される査察のガイドを発行しました*。その中で、GMP査察のポイントとして、6つのサブシステムが明確に示されています。次の通りです。
1)品質システム
2)製造システム
3)施設と設備のシステム
4)原材料のシステム
5)包装と表示のシステム
6)試験室管理のシステム
*Drug Manufacturing Inspections (2002/2017改訂), FDA Compliance Program Guidance Manual 7356.002
筆者が以前に勤務していた米国系の外資系医薬品企業ではこの6つに加え、企業ポリシーとして、さらに7)無菌性保証のシステム、8)コンピュータ化システムを加えた8つのシステムを運用していました。このように、企業ごとにバリエーションはあるのですが、現在この6つのサブシステムは査察のガイドに止まらず、医薬品製造における品質保証/GMPのシステムとして、米国系企業を中心に広く受け入れられています。筆者が対応した海外企業によるGMP監査(企業による「監査」を当局による「査察」と区別しました)の経験でも、事前に送られてくる監査計画書の章立てがこの6つのサブシステム通りになっているケースが多くあります。また、こちらから海外企業の監査を行った場合に、サイトマスターファイル(Site Master File)と呼ばれる製造所の概要を記載した文書を確認するのですが、その内容がやはり6つのサブシステムの順に構成されていたりと、6つのサブシステムの考え方の支配力?に少々驚かされることがあります。
6つのサブシステムはあくまでも米国FDAの考え方ですが、EU圏でもEU-GMPを見ると基本は同様の内容と言えますし、近年の欧米の医薬品企業の合併でできたグローバル企業ではFDAの考え方もポリシーに取込む必要があり、今やこうした6つのサブシステムはグローバルに通用する考え方と言ってよいように思えます。
次項では、6つのサブシステムのうち特に1)品質システムに焦点を当て、わが国のGMP省令を品質システムの観点から考察します。
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