現場管理者・監督者へのメッセージ(GMPの3原則から)【第17回・最終回】

2015/10/08 品質システム

10.11.システム(11)品質情報/回収:
10.11.1.回収処理手順
 薬食発第1121第10号(H26.11.21)「医薬品・医療機器等の回収について」や、医薬品医療機器法68条11(回収の報告:旧薬事法77条4の3)や医薬品医療機器等法施行規則228条22(回収報告:旧薬事法施行規則254条)などを参照願いたい。
 医薬品等の回収は、GQP省令に従い「製造販売業者」が “回収”の決定および当局へ報告をしなければならない。具体的に言えば、品質保証責任者からの品質不良に関する報告を受け、総括製造販売責任者が“回収”を決定し、品質保証責任者やその他関係部門に指示をすることになる。
 現実的には、危害発生の重大性と緊急性を考えて迅速に決定・対処するために、統括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者、販売部門・物流部門・広報部門、法務部門などを交えた会議が行われ、連絡・協議・決定され、経営トップおよび当局へ報告されることになる。
 回収する事態が生じた場合、社内の調査報告・協議・決裁などの報告決裁ルート、責任者、社外へのアナウンス方法、回収の実作業(流通・医療機関への連絡・回収依頼、回収品保管)、回収完了の確認、結果報告などの手順を“詳細に、具体的に”整備しておく必要がある。
 これらの回収処置フロー図や記録様式類、さらには当局や医療機関に対する報告書・依頼文書などの「記載見本(ひな型)」までも準備しておくべきである。
 自社製造所を所有する製造販売業者の場合は、製造所と連携を図り迅速に対応することは比較的容易である。一方、製造業者に外部委託する場合、迅速に回収判断や回収処理ができるように、受託製造業者に対し「品質不良の原因調査(および不良範囲が限定的か)」「回収品の保管管理」や「代替品の準備(欠品防止策)」など、製造販売業者からの要請に対して迅速に対応できるように指導徹底しておかなければならない。
 海外製造所の製品を輸入して日本国内で販売している場合や、日本国内製造所の製品を海外に輸出している場合など、時差の関係もあり、より連絡調整が取り難い。これらの手順を取決め、製造販売業者や製造業者の関係部門に徹底しておく必要がある。
 回収決定後の実作業は、社内の広範囲な部門と連携を図り進めなければならないため、各部門が遅滞なく行動できるように“模擬回収”の訓練をしておくことも必要であると筆者は考える。

<余談 模擬回収トレーニングのコンサルタント>
 筆者が勤務していたアイルランド子会社での話である。
 製品回収・危機管理に係わるコンサルタントによる「模擬回収」の訓練を受けたことがある。
 コンサルタントが“ある状況”を想定して物語風に話を進めて行く。
 最初、欧州のある国の病院から製品品質について問い合わせが来る。その問い合わせが販社窓口を経由せず直接アイルランドの製造会社に第一報が入ったという想定である。その後、時間経過とともに新たな情報が入り、次第に重大な問題であることが判明してくる。欧州販社や日本本社へのタイムリーな報告や連携を取りながら、最終的には“迅速な回収措置”が必要となる。物語風に事態が徐々に悪い方へ展開していく中で、初期情報の入手時点やその後の追加情報が得られた時点などの各ステージで、品質保証部門の係長/マネジャー、製造部門マネジャー、品質保証部長、工場長など、個々に「その時どのような判断・アクションを行うか」のインタビューを受ける。当時、社長であった筆者も呼び出されてインタビューを受けた。その時の応対の内容から、問題点・改善点を抽出して後日レポートされる。色々なコンサルタント業、ビジネスチャンスがあるものだ。

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執筆者について

小坂井 宏

経歴 1971年武田薬品工業(株)入社。製剤化技術検討や、国内工場の製造部門・品質管理部門で製造技術・バリデーション・GMP管理・FDA査察対応などの職務に従事。工場 製造部長・製剤部長、製薬本部 品質保証部長、武田アイルランド社長(海外工場)を歴任。2013年退職。
製造所のGMP管理(製造管理、品質管理、文書管理)の実践的対応、FDA査察の実践的対応を得意とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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