現場管理者・監督者へのメッセージ(GMPの3原則から)【第3回】

2014/08/25 品質システム

2.9. SOP(standard operating procedure)標準作業手順、管理者の責任
 筆者も現場マネジャーの時代に、工程作業トラブルなどが原因で製品廃棄や社外クレームが生じた場合、上司から真っ先に聞かれるのは「その作業はSOPに定めてあったか?」である。「SOPを定めてあったなら遵守しなかった作業員が悪い、SOPに定めていなかったなら現場マネジャーが悪い!」ということだ。SOPの遵守は、製造品質の保証のための基本的要件である。そのSOPの制定は現場マネジャーや係長に求められる重要な役割の一つだ。
 前述の上司の話にはさらに続きがある。結局のところ、「SOPを定めてあっても作業員が遵守しなかった」なら、「そのような管理・指導を徹底していない現場マネジャーが悪い!」となり、責任は逃れられないのだ。
 
2.10.SOPの教育は、改定の都度速やかに!
 作業変更に対しては、その都度速やかにSOP改定し教育徹底しなければならない。
 20数年前に訪問した米国の大手医薬品会社の事例である。米国では「何時FDA査察官が立ち寄るかも知れない」という背景と「全品目がFDA査察対象」ということも理由の一つと考えるが、標準書類や各種SOP類の制定改訂は非常にタイムリーに確実に行われており、またそれを可能にするだけの十分な人員を品質保証部門(QA)に配置していた。それでも、SOPの部分改訂を急がなければならない場合は、まず「(承認された)朱書き訂正版」のSOPでQAが作業員に教育していた。この場合の重要な留意点は「朱書き訂正版」とその後の「タイプ修正した改訂版」は必ず両方セットして保管するようにルール化していることである。「形・格好」よりスピードを重視した管理だといえる。製造現場の管理を経験した人であれば、このやり方も支持したいと考えるのではないだろうか。筆者も「このやり方」を支持したいと考える。
 ただ、PIC/S-GMPガイド Part I(4.6)「文書は手書きでないこと」と記されているので、頑なな査察官には理解されないかも知れない。当局の立場からすれば、「迅速にSOP改訂できるだけのQAの陣容を確保するのが道理」と言われるかもしれない。「朱書き訂正を認めること」および「文書管理や教育訓練の運用方法」を社内で文書化し徹底しておけば勝算はあるのではないかと筆者は考える。
 

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執筆者について

小坂井 宏

経歴 1971年武田薬品工業(株)入社。製剤化技術検討や、国内工場の製造部門・品質管理部門で製造技術・バリデーション・GMP管理・FDA査察対応などの職務に従事。工場 製造部長・製剤部長、製薬本部 品質保証部長、武田アイルランド社長(海外工場)を歴任。2013年退職。
製造所のGMP管理(製造管理、品質管理、文書管理)の実践的対応、FDA査察の実践的対応を得意とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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