業界雑感 【2019年11月】

2019/12/06 その他

 昭和57年ごろだからかれこれ40年近く前になる。当時エチレンオキサイド(EO)ガス滅菌のバリデーションの検討をしていたことがある。現在も医療用具の滅菌等では広く一般的に使われている滅菌法なので、当時からみるとバリデーションの理論もずいぶん進んでおり、まさかこんな議論はされていないのだろうと想像しているのだが。当時言われていたこととは、EOガス滅菌の滅菌条件はEOガス濃度、温度、時間に加え湿度が影響する。したがってEOガス封入前に加湿をするためにEOガス滅菌機に加湿装置を取り付けたので、どういう条件でどのくらいの水量で加湿したら最適の滅菌条件が得られるのか検証(バリデート)しろ、といったようなことだったと思う。加湿装置といっても、滅菌機缶体に取り付けたポットに水を入れ、電磁弁を開いて缶体内に水を注入するだけの装置である。湿度センサーなるものも取り付けてあったのだが、これもまだ開発途上で空気中の湿度はまあまあ正しく測れてもEOガス滅菌中の湿度は、というとはなはだ???といったこともあった。結果的には毛髪温湿度計が一番信用できる、みたいなことになったことを記憶している。
 加湿に関してもただ単に真空引きした缶体内に水を注入するだけでよいのかというと、どうもそうでもないらしい。水ではなく熱湯のほうが蒸発しやすいのか、いやいや缶体全体を真空で引いたうえ加温もしているのだから当然蒸発して水蒸気になっているはず。だから、缶体内の水蒸気分圧はボイルシャルルの法則から一定だろう。。。などと苦手だった物理の知識も思い出しながら考えるのだが、いざ滅菌のバリテーションをしてみるとバイオロジカルインジケーター(BI)が陽性になる箇所が時々ある。ガス濃度も温度も暴露時間も条件を満たしているのに何故? ということで実験を繰り返す中で気が付いたのが、絶対湿度と相対湿度の違いである。BI陽性となるのは決まって滅菌機扉に取り付けたBIで、滅菌後の状態を見ているとポツポツ水が凝縮している。缶体は加温され温度が上がっているが、扉については熱媒が通っていないので、熱分布でいうとコールドスポットになっていた。当然その付近の相対湿度は100%近くになっていたと想像できる。

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執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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