プロせすを楽しむ (3) ~うなぎとやきものを楽しむ~

1. 陶器と磁器
 陶つくりを名乗っていると、「陶器と磁器の違い」を尋ねられます。土から作るのが陶器、石から作るのが磁器と説明します。もっと具体的には、「信楽粘土から陶器を、天草陶石から磁器を作ります」という説明もします。ただ、土も石も地球を構成する成分としては同じであり、石を砕いた粉末から作った泥漿と粘土の塊を溶かして作った泥漿を区別しています。
 陶芸教室でいきなり磁器を轆轤で引くことを教えず、粘土から手捻りで陶器作りを教えます。また、陶器より磁器のほうが高温焼成なので、陶器は初心者が磁器はベテランが職業とするものとの認識もあります。
 現に、有田や九谷など磁器の産地では、石を砕いて磁器用粘土を作る人、ろくろを引いて生地を作る人、素焼き窯を炊く人、釉薬をかける人、本焼きをする人、上絵を書く人、上絵焼きをする人、金彩銀彩をする人、仕上げの焼きをする人がそれぞれ過程を分業化しています。絵付けにしても、輪郭を骨書きする人とダミを入れる人は分かれているのが一般的です。
 前工程から詳しい指図書が渡される仕組みでもなく、それぞれのパートを司るプロが役割をまっとうして、一つの作品を仕上げているのです。
 それに比べて、信楽や唐津で焼かれてきた陶器は、有田や九谷で焼かれてきた金襴手の絵皿ほどは分業化が進んでいません。夫婦や親子で仕上げておられる方も多いのです。

2. 一楽、二萩、三唐津
 「一楽、二萩、三唐津」という言葉があります。これは抹茶茶碗のいわば格付けですが、一楽といわれる楽家の当代(とうだい)である第十五代当主、楽吉左衛門氏から直に聞いた話では、普通、聞いたと言わず、伺ったと言うべきですが、筆者は、当代と中学校同級生ですから、聞いたくらいが適切でしょう。
 自慢になりますが、先日会ったとき、「70歳になったとき何してる?」という話題になって、当代自らが「ちゃわんや」図録の裏表紙に、「70歳の時 布ちゃん(筆者中学時代の呼び名)」というイラストを描いてもらいました。
 


写真1 イラスト

 話を戻しますと、楽茶碗は当代が一人で造ります。楽茶碗を焼く窯は、原始的な錦窯と呼ばれるもので、燃料の炭を熾すに鞴(ふいご)を使います。ここには手伝いは必要ですが、当代自らが消防服の出で立ちで錦窯を焚き、茶碗を窯へ入れ出しするところまで、主に1人ですると聞きました。
 また、楽茶碗を作る土をも、当代自ら山へ入り調達しますが、この土は寝かせる必要があって、直ぐには茶碗になりません。縁の下にしまっておいて次代当主が使うと聞きました。よって、楽茶碗は先代、当代と手伝いの人、最低3人で多くの過程を経て出来上がることになり、時間軸では四半世紀を費やすることになります。当代の黒楽茶碗傑作が東京駅の百貨店で展示されていましたが、自ら「ちゃわんや」を名乗るプロ中のプロが一人で作られるのですから、この価値へも納得します。

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