プロせすを楽しむ (4) ~うなぎとやきものを楽しむ~

1.これは何でしょうか?
 陶芸家の川瀬忍氏は、美術商の方々から「これは、何でしょうか?」の一言に、辛い思いをし、耐えていたように思う。工人として、焼き上がった自作に対して、「最初に本人がしなくてはならない選別に、絶えず悩んでいた」と陶説738号(日本陶磁協会発行)に書かれています。
 川瀬忍氏は、お祖父さん(初代川瀬武春氏)から砧青磁袴腰香炉を与えられ、これをお手本に完璧主義を貫かれてきました。「出来具合よりもキズなど欠点を指摘されることを恐れていた」とも書かれています。
 作品の出来具合へ完璧を求めると、次へ進めなくなって時ばかり過ぎてゆきます。もう雁字搦めになって、新しい方法を工夫すること、過程を増やすことなど、プロせすを楽しんでいるどころではありません。
 新しい材料を吟味し、感動させる形を工夫・タブーとされた色合いへ冒険もできませんから、臆病になって成功した範囲から出られなくなってきます。
 例えば、青磁と一括りに呼ばれる端正な陶磁器があります。青空や深海をイメージする青色の他に、赤みを帯びた米色青磁、ひび模様を楽しむ貫入青磁、貫入青磁でも、ひびのみ、ひびに赤い弁柄、黒い墨を練りこんだものなど様々です。既にそれぞれが青磁として存在位置を確立しているのです。
 これを基準として、異なる色合い、意図しない風合い、管理できなかった傷や汚れは、一括して欠点とみなされ、「これは青磁ではない」と異端視されます。
 川瀬忍氏は、「この欠点(黒ポッチ、ピンホールなど)を、もともと粘土に含まれていた、目に見えなかった「精」ではないか。私はそうした欠点を焼成中の、窯の中で天から賜った「精」と解釈したのである」とされ、欠点を生かす新たな境地へ進まれます。

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