業界雑感 【2019年10月】

 「想定外」という言葉が頻繁に聞かれはじめたのは、東日本大震災での福島第一原発の事故以来のように思う。もう30年近くも前になるが、電気を「つくる」という意味では医薬品のモノづくりと共通するものがあり、原子力発電所の建設や運転管理の厳格さについての話をうかがって感銘をうけた記憶がある。原発の安全対策やリスク管理に関しては医薬品製造における品質管理やバリデーションの考え方をはるかに上回る管理がされているのだと思っていたのだが、その後、1999年9月に茨城県の東海村にある核燃料加工施設で臨界事故があり、その事故の原因が燃料加工の工程で臨界事故防止(臨界安全)を重視した正規のマニュアルではなく、「裏マニュアル」に沿って作業をしていたことにあったことを思うと、どの世界にも建前と本音というものがあるのだと少し落胆したことを思い出す。
 話を元に戻すが、ここのところ想定外と言われる災害が続いている。つい先日も台風15号に続いて19号が東日本に広域に大きな被害をもたらした。台風というと8~9月に九州や四国・紀伊半島くらいに上陸するのが一般的で10月の台風は太平洋高気圧が弱まって東にそれるというのが想定内であるとすれば、19号のような強さと大きさで関東地方を直撃する台風というのは想定外だったともいえるのだろう。
 医薬品業界で想定外のことといえば、もっともあってはならないのは薬害と言われるものだろう。日本ではサリドマイド事件やスモン事件、薬害エイズ事件、C型肝炎事件などが代表的なものとして挙げられる。薬そのものの副作用であったり、ウィルス感染やクロスコンタミネーションであったりで原因もさまざまではあるが、今さらながら「薬は毒です」と大学入学時の学部長あいさつの第一声で聞いた言葉が思い出される。外見だけで判断できるようなものではないだけに、医薬品メーカーとして今後もしっかりやっていかねばならないと思う。

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