再生医療等製品の品質保証についての雑感【第6回】

はじめに
 今回からは具体的な製造工程手順の構築についてお話しをします。本稿では、工程の定義、および、製造再現性に関わる重要な操作および動作(重要工程パラメータ, CPP)の決定に向けて、細胞を製品とする上での課題について雑感を述べさせていただきます。

● あらためて工程について定義する
 これまで、工程がきちんと実施できると信じていないこと(第1回)や、開発時のパイロットスケールから商業生産まで一貫して工程特性を把握することの重要性(第2回)についてお話ししましたが、そもそも、再生医療等製品製造の工程という区切りは、どのような意味(位置づけ)で定義されるのでしょうか。
 再生医療等製品の原料であり製品となる細胞は、生きており、継続的に生反応が生じています。いわゆる呼吸を含む代謝や生合成などですが、これらは、細胞を適切な手段で凍結して生反応を停止させるまで、変化を止めることはできません。また、幹細胞における未分化/分化状態の維持あるいは変化は、培養環境に依存して生じますが、環境は必ずしも100%均一にならないため、細胞への影響も全てが均一とはならず、細胞ごとに異なる(ヘテロに向かう)ようになります。そのため、最終製品においては、これらの『細胞群』が、許容できる(品質規格の)範囲内のばらつきで、再現性よく得られるように管理する必要があります。
 生きた細胞を製品とする製造では、細胞を解凍して播種してから再び凍結して保管するまでの数週~数ヶ月の培養期間において、常に変化を止めることができないことを念頭に、インキュベータと無菌操作等区域への移動時間や振動・衝撃、無菌操作等区域での操作時間、インキュベータ内(定常状態)での静置時間を適切に管理する必要があります。同時に、移動時や操作時における振動や衝撃などについては、許容の範囲内で、繰り返し同程度となるように、培養期間を通じて管理する必要があります。このとき、細胞が変化を続けている間のプロセス(過程)が止まらない一連の管理単位であり、凍結した細胞を解凍して再び凍結し保管するまでの変動要因がリスクとなる1つの"工程"と言うことができます。
 これに対して多くの製造では、これらの一連の細胞を培養する過程のうち、例えば、"作業者が作業室(細胞加工施設)に入り"、細胞を定常状態(インキュベータ)から取り出し、操作を行い、また定常状態(インキュベータ)に戻し、"作業者が作業室を出る"までの一連の作業について、工程と定義されることが多いと考えています。本稿での工程もこの定義に準じてお話しをしております。

 上記の定義では、培地交換や継代などに関わる操作群が工程と定義され、製造では、複数の工程群と細胞を成育する定常状態を合わせた、培養期間に渡る全過程によって目的の製品の品質が達成されます。このとき、これらの工程の多くは、非常に悩ましい特徴を有してしまいます。端的に結論を言うと、工程(プロセス)に重要工程パラメータ(CPP)が厳格に存在するのに対して、アウトプットでその結果が『不可視』となることです。例えば、培地交換工程では、古い培地が抜かれ新しい培地が補充された結果(操作および量)や、そのインプット(原料等あるいは工程資材)が適切であった結果は容易に確認できます。また、操作の無菌性の確保についても、予めの教育訓練やプロセスシミュレーションテストの結果より想定することは可能ですが、いずれも間接的なアウトプットの評価です。これに対し、培地交換の操作(振動や衝撃など)が細胞に与えた影響の結果は、後になって(複数の工程群の結果として)でなければわからないものであり、工程単位での(中間製品そのものの)評価は困難と考えます。

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