GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第23回】

1.実効性の評価
 教育訓練において、実効性評価が求められている。GMP事例集(2013年版)GMP19-4(教育訓練)に次のような記載がある。
「実効性の評価」とは、製造業者等として、教育訓練の内容が的確に実務に反映されていることを、例えば模擬製造等により評価することをいう。
実効性評価とは、PDCAサイクルのcheck(評価)であり、教育システムとしての評価である。教育訓練が実際の作業において有効であるかであり、教育の方法、内容、時間、頻度、教育を受けた者の理解度の評価方法及びその指導者自身への評価であり、教育訓練のシステムとしての評価である。


 では、この教育訓練を受けた者が10人おり、そのうち1人が作業のミスをし、逸脱(ヒューマンエラー)を起こしたとき、この教育の実効性はなかったといえるであろうか。実効性評価の判定基準を設けることは困難である。それは、すべての受講者に対して、100%の教育訓練は存在しないからである。人間は一人一人異なっており、機械ではない。装置は点検校正やバリデーションにより、その効果を判定できるが、人間は、個々の性格や得意、不得意があり、同じ人であっても、その時の体調等により作業も一律とはならない。学校等での勉強に得意、不得意があるように、一つの教育訓練方法で万能なものは存在するはずがない。だからこそ、人材としての才能を見極め、適材適所の人事が必要なことは、GMPにおいても変わらない。その技能(スキル)を見極め、評価することがマネジメントである。
教育訓練において、重要なことは、各プロセスにおいて、必要な技能(スキル)を明確にして、そのプロセスのプロフェッショナルを養成することにある。その養成のための指導者は、そのプロセスを十分に理解し、各作業者に合わせた教育指導できる能力を有していなければならない。つまり、その指導者に対する評価を行うことが実効性の評価となる。教育訓練指導者に対する認定制度は必須とすべきである。しかし、すべてのプロセスに必ず必要ではない。それは、その製造所における重要な工程であり、特別な技能がいるプロセスである。供給者管理における監査員や自己点検における点検者は、認定制度とすべきである。しかし、その監査のポイントは、監査員が一律な見方をするのではなく、得意な技術を持っていることが重要である。コンピュータに詳しい者、微生物に詳しい者、水の管理に詳しい者、空調管理に詳しい者、品質システムに詳しい者など、多種多様であっていい。それは、品質の維持、管理の方法も多種多様であるからである。自分自身がこれまで行ってきた管理方法と他の製造所の管理方法の違いを知ることも教育訓練の一つとなる。実際、私自身も、多くの製造所に査察し、いろいろと議論しながら、各製造所のGMP管理を学んできた。だからこそ、監査員は、経験が重要であり、多面的な見方ができる能力が必要である。
 1つのヒューマンエラーがあったからと、教育訓練の実効性がなかったと評価すべきでない。ただし、そのエラーを起こした作業者に対しての評価はどのような結果であったかは確認すべきである。その教育訓練により、スキルの習得ができていないと判断されたのに、作業についたのなら、その作業にあたらせたことが問題である。スキルを習得したと判断したのなら、その判断方法が悪かったのかもしれない。その時の教育訓練の記録について、分析することが必要である。安易に教育訓練の不足と結論すべきではない。

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