細胞加工施設運営における『経年劣化・老朽化』への対応【第5回】

 臨床用にであれ研究用にであれ、ヒト細胞の調製、加工、製造を実際に行うには「細胞加工施設」と呼ばれるハードウエアが必要である。細胞加工施設は一般にCPC(Cell processing center)やCPF(Cell processing Facility)とも呼ばれており、再生医療分野での取り組みを行う上では、必須の施設だ。本稿では以下、CPFの略称を使用する。
昨今、大型建造もあちこちで見られるCPFについて、本稿では長期使用時の経年劣化や老朽化の兆候、それら現象への対応、管理法など実務的な側面を6回に分けて論じていく。5回目となる今回は、CPFの経年劣化や老朽化に関わるイニシャルな要素と、その影響について記載する。これは、これからCPFの建造・運営を考える人たちには重要な部分と考えられる。

▽いちばん最初に必要な要素
 もし今、自社でCPFを保有しようという話が持ち上がったなら。そして、新規に建造されるその施設の運用をあなたが任されるとしたら、あなたは最初になにを検討すべきだろうか?
 おそらく経営側の人たちは、なによりも土地建物の価格、そして社員が通える範囲でのアクセス、運用人員の配置、施設規模と管理コスト。そのようなことを検討せねばならないだろう。製造や技術に関わる人たちは、培養に必要な機器を選定し、ラボで行っていた作業をCPFに移管する上で、必要なスペースと機能を検討せねばならないだろう。
では実際の管理・運用を行う人間が、施設建造に対し最初に考慮すべきことはなにか。ここでは3点を取り上げたい。
 まず1点目は、大型機器等の搬入路が確保できるかどうか。
2点目に、立地だ。社員が通いやすいに越したことはないのだが、実は河川や田畑など近隣の環境はダイレクトにCPFに負荷をかける。
そして最後の3点目が、天井高である。こればかりは、「高さがあるに越したことはない」と言いたい。一般のオフィスビルなどでは難しいのだが、いざという時のため、CPFの天井裏には最低でも作業者が膝立ち程度で入れる高さを確保したい。
 以上3点、お気づきかもしれないがこれらはすべて後のメンテナンス時に大きく影響してくる要素である。勿論、電力確保のためのキュービクルスペースや、非常電源の有無など、他にも考慮したい点はあるだろう。だがそういった点は、費用さえ出せば解決する手段はある。実に上の3点は、後々まで影響を及ぼしてくる要素でありながら、一度立ててしまえば取り戻しがきかない部分だ。つまり、経年劣化が生じてきた際どうできるかは、実はこの初期の段階ですでに決まっているともいえる。
 この3点のイニシャルな条件によって、経年劣化対応が困難となるケースを、以下に具体的に例示する。

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