【報告】日本版GDPガイドライン説明会を受講して

2019年1月18日に「きゅりあん(品川区立総合区民会館)」にて「「医薬品流通にかかるガイドラインの国際整合性に関する研究」 成果報告会」が開催された。具体的には、2018年12月28日付で厚生労働省 医薬・生活衛生局 総務課及び監視指導・麻薬対策課から発出された事務連絡「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン(以下、日本版GDPガイドライン or 本ガイドラインと記す)」の説明会である。本ガイドライン、2018年の夏に東京・大阪・富山で開催された上記研究班による「日本版GDPガイドライン(案)」の説明会を踏まえ、昨年末に厚生労働省が正式発出したことに伴う続編と言える。

今回の説明会は、主に昨夏の説明会時の「ガイドライン(案)からの修正点」*1を中心に話が進められ、Q&Aについては、昨夏には口頭説明のみであった回答部分が提示された。昨夏の説明会と同様のプログラム進行であったこともあり、前回出席者にあっては、良く言えば分かり易い、悪く言えば内容的に大差ないという印象を受けた。

以下、2回共に出席した者として、今般の説明会の概要と印象を報告する。ただ、筆者、GDPについては、自分なりの認識と意見を持っている。また、自分で言うのも何だが、かなりアクが強い。そのため、報告と言いつつ、勝手な個人的意見も記している。読者にあっては、その点をご理解頂いた上でお読み頂きたい。その意味において、末尾に記したリンク先から講演・説明資料をダウンロードして頂き、忠実に中立の立場で勉強することに加えての“オマケ”として、こんな風にも読み取れる、或いは、こんな奴もいる、としてお読み頂ければ幸甚である。

以下、プログラムの順番に記す。

【医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン検討の経緯】
厚生労働省医薬・生活衛生局総務課からの講演である。あくまで“経緯”ということもあるが、総務課という立場の話であることから、2017年1月に発生した「ハーボニー偽造品事件」に目が向いてしまっており、PIC/S GDPとの相違といった観点は乏しいと言わざるを得なかった。また、その業務管轄のため、どうしても卸売販売業・販売業・薬局・医療機関などの業許可取得者と関連法規制という色が濃く、医薬品サプライチェーンとしてのグローバルに言うGDPという見方からすると違和感を覚える。

ただ、先の「ハーボニー偽造品事件」という観点においては、事件発生から1年ちょっとの期間で、薬機法施行規則・薬局等構造設備規則・薬局等業務体制省令等の一部改正まで漕ぎつけたことは称賛に値する。

敢えて言えば、日本特有の商習慣としての課題でもある、卸売販売業者間の売買(現金問屋を含む)や分割販売に及んで整理して頂ければ、もっと良かったと思うが、中には「必要悪」などと称する者もいるくらいであり、総務課としては、別途「医薬品流通の改善(適正流通価格・新バーコード表示等)」の課題も抱えていることから、そこまで足を踏み込めないものと想像する。


【GDPガイドライン国際動向と日本の実施状況調査結果】
金沢大学の木村先生の講演である。偽造医薬品の専門であるので仕方ないとも言えるが、GDPとしての全般的な話ではなかった。日本において、明確に偽造医薬品と思われるものは、先述の「ハーボニー偽造品」くらいで済んでいることは幸いなことである。先生の努力の賜物なのかもしれない。

一方で、その講演内容からは、あたかも「偽造医薬品対策=GDP」と勘違いされそうな印象も受ける。特に、製造販売業者及び卸売販売業者(以下、両者込みの場合は、本ガイドラインに合わせ「卸売販売業者等」と記す)と異なり、実際には売買が発生しない、倉庫業者や流通業者*2にとっては、今一つ「ピンと来ない」といった印象を受けたのではないかと危惧する。倉庫業者や流通業者にとっては、依頼主からの伝票と配送先が全てであり、直接的な内容確認はできない。依頼主がミスるか、犯罪行為をしても気づく術はない。伝票の内容品を依頼送付先に日時・場所を間違えずに予定通りに運ぶことが全てだと言ったら、言い過ぎであろうか。


【医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン概要と解説(1)】
日薬連メンバーによる、日本版GDPガイドライン各章の解説である。ここでは、緒言・目的・適用範囲と共に、第1章「品質マネジメント」、第2章「職員」、第3章「設備及び機器」のポイントが、昨夏案からの修正点と共に解説された。

資料は、ポイントが赤色で、修正点が青色(+取り消し線)で示されており、見易くなっている。また、箇所箇所に運用のアドバイスが黄色で示されており、資料としての出来は良いと思われる。本稿の紙面の都合もあり、個々の項目の解説はしないので、日本版GDPガイドラインと説明資料とを良く読んで頂いた方が宜しいであろう。

惜しむらくは、大手の卸売販売業者等においては、そのリソースも含めて対応可能と思われるが、中小企業、さらに受託側となる倉庫業者・流通業者として、「あなた方にとっては、かくかくしかじかです」といったことに触れられなかったことであろうか。

特に、「お上に従う」、「右へならえ」として従順な日本人、またHow toに拘る日本人にとっては、「緒言」、「目的」、「適用範囲」といった最も大事な部分を飛ばして読む、そこまで行かないとしても精一杯理解しようとは思わない可能性が高い。

例えば、本ガイドラインにおいては漠然と「医薬品」と記され、この具体的な中身は定義されていない。薬機法に言う「医薬品」と解釈されるが、薬機法第2条「定義」を知っている者がどれだけいるか疑問であり、まして今般の本ガイドラインは厚生労働省管轄外の倉庫業者や流通業者にも関連し、協力を仰ぐのであれば、「ここで言う医薬品とは・・・」とした定義が望まれる*3。少なくとも、適用範囲においては、「本ガイドランは医薬品の市場出荷後、薬局、医薬品販売業、医療機関に渡るまで医薬品の仕入、保管及び供給業務に適用する。」として卸売販売業者等に限定しないと解釈される言い回しとなっていることも踏まえれば、ちょっと不親切と言わざるを得ない。


【医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン解説(2)】
ここでは、第4章「文書化」、第5章「業務の実施(オペレーション)」、第6章「苦情、返品、偽造の疑いのある医薬品及び回収」のポイントが、案からの修正点と共に解説された。個々の項目の解説はしないので、日本版GDPガイドラインと説明資料とを読んで頂きたい。

ここで感じたことは、GMPやGQPを運用している企業にあっては、何のこともない要件であるが、これらに縁のない(なかった)企業にあっては、今回の解説を聞いたところで、やっぱり理解できないのでは?、ということである。孤立無援の会社ということもないと思うので、関係会社でGMP and/or GQPを運用しているのであれば、素直に教わることを推奨する。また、倉庫業者や流通業者にあっては、受託となるはずなので、委託者である卸売販売業者等の協力を仰ぐことの方が賢明であろう*4。少なくとも、本ガイドラインの趣旨を持って、行政の期待に応えるのであれば、卸売販売業者等が協力し、支援することは必然のように思う。


【医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン解説(3)】
ここでは、第7章「外部委託業務」、第8章「自己点検」、第9章「輸送」のポイントが、案からの修正点と共に解説された。個々の項目の解説はしないので、日本版GDPガイドラインと説明資料とを読んで頂きたい。

ここで認識してほしいことは、第7章「外部委託業務」と第9章「輸送」は、医薬品業許可取得者*2となる倉庫業者や流通業者にも直接関わる内容だということである。

第7章「外部委託業務」については、「契約書」と「監査」がキーワードと言える。GMPやGQPに縁のなかった会社にあっては、これらの意図することを理解し、“受ける側”として、その対応をすることになる。

第9章「輸送」については、各項目の主語に注意されたい。結果的には、「卸売販売業者等の責任において」との解釈にはなるが、実際の作業そのものについては、委託を受けた流通業者が行うことになるはずである。

ここでも、大事なことは、先述のとおり、卸売販売業者等が協力し、支援することである。俗に言う“丸投げ”をやめ、お互いの分担作業として協力し合うことが基本であろう。

少なくとも、昨夏並びに今回の説明会を通じ、数年前まで「GDP=コールドチェーン」といった、単なる温度管理に限定されるものではなく、製品の汚染や痂疲の対策は当然ことながら、加えて偽造医薬品対策や盗難セキュリティなども含めたサプライチェーンにおける、市場出荷から最終送り先までの医薬品品質の確保というGMP・GQPと同列の重要な位置づけの保証行為であることは認識できたものと思う*4


【医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインに対する質疑応答】
関連団体のアンケートやご意見を取り纏めた上での質疑応答(Q&A)とのことであった。昨夏での説明会においては、全31件であったが、今回は全54件と増えていた。How to好きの日本人にとっては嬉しい限りかもしれない。

ただ、個人的には、回答が必ずしも質問の意図を汲んでいないように思われるもの、禅問答のような回答もあり、若干疑問を感じた。大手企業であれば対応可能であっても、リソースの少ない中小企業においては対応困難な事情もあるかと思うが、そういった想定の回答は少ないように思われた。

また、ちょっと皮肉を言えば、外部委託者の能力評価や仕入れ先の適確性評価の回答として、監査に加えて、「他社情報やインターネット上のホームページの確認」ということが示されていたが、コレッて性善説に基づく日本人ならではの解釈なのでは? 危ない会社ほど、上手にウソをつき、詐欺的行為をするのでは? 情報源としては多種多様で宜しいと思うが、一方で、素直な会社ほどこれらに振り回される可能性もある。自社の責任となることは自社として評価し判断することが望まれると思うが、いかがであろうか。


【全体を通じて】
全体として、昨夏の説明会での曖昧さは減少し、分かり易くなったと言える。それだけ、ガイドラインとしての精査が進んで洗練されたということかもしれない。ただ、内容的には昨夏の説明会と大差なく、実運用に向けては、特に会社としてGMPやGQPを運用していない会社にあっては、本ガイドライン及び説明会だけで実運用に至れるかと言えば、かなり高いハードルがあるように思われる。

説明会の中でも「関係業界の理解を含め、普及啓発を図る」とされていた。その通りである。が、一方で、具体的にどのように普及啓発するのかには触れられていなかった。説明資料の中においても、平成31年度研究活動としては「技術情報の提供」と記されているだけで、具体性がない。また、今後「解説書」を作成するというコメントはあったが、どういう業種・業態までの影響を想定して解説するのかは不明である。

キツイ言い方をお許し頂ければ、今般の「日本版GDPガイドライン」で取り敢えず突っ走るといった感がある。あくまで事務連絡のレベルであり「法的拘束力がない」と言えば、聞こえはいいが、一方で、医薬品サプライチェーンという宿命上、その適用は卸売販売業者等に限定されず、厚生労働省管轄外の業種・業態にまで影響は及ぶ。これら厚生労働省管轄外の業者は、あくまで卸売販売業者等の委託先に相当し、委託者の責任で管理運用させるという意味なのだろうか。ビジネス的にはそれで成立するかもしれないが、現実の世界では「やらせる/やらせられる」の構図となってしまう。表向きは「協調」、実態は「強制」といったことは避けて貰いたい。それとも、そこはビジネスの問題なので行政としては立ち入らないという姿勢なのか。率直なところ、このようなやり方でGDP本来の「医薬品の適正流通」の実質的な運用に至るのか否か、やや疑問を感じさせる。

先にも述べたが、とかく日本人は、「お上に従う」とし易い。決して良いことだとは思わないが、むしろ、ある程度の法的拘束力を持たせたほうが効果的という考え方もある。管轄省を跨ぐために敢えて避けたと思われても仕方ない。また、またHow to好みの日本人であることから、PIC/S GDPガイドの概念と要件を和訳したように持って来られても、「あー、なるほどね」で終わる可能性が高い。もし可能であれば、今後の課題として、日本の医薬品流通の実態に即した“How to物”を検討して頂ければありがたいと思う次第である。

少なくとも、事務連絡の通知文書には、「本ガイドラインの対象である、卸売販売業者及び製造販売業者をはじめ、医薬品の流通に係る全ての関係事業者において、本ガイドラインを参考に業務を実施いただくよう、貴管内の製造販売業者、卸売販売業者、関係団体等に対し周知いただくようお願いします。」*5とある。周知はともかくとして、これだけで実運用が図れるとは思えない。


GDP本来の目的である、医薬品の適正流通は、病院・薬局等に届くところで終わる。それに加え、実際の医薬品の使用は患者に委ねられる。病院・薬局等での保管と患者への販売(手渡し)は当該病院・薬局の責任であり、別途の法規制がかかる。そこには服薬指導も入る。さらに言えば、患者としての服薬コンプライアンスもあって、初めて本来の医薬品の有効性・安全性が発揮される。今般のGDPのみならず、病院・薬局等以降の患者の服薬までのバトンタッチの連携がモノを言う。医薬品に関わる者として、その管轄省や業種・業態を問わず、GDPを含めたGxPウンヌンの前に、まずは「クスリは何のために、誰のためにあるのか」の原点に戻って見つめ直してほしいと願う。また、普及啓発に際しては、最も大事な、この点を伝えてほしい。


なお、今回の講演・説明資料については、下記URLのウェブサイト「厚生労働行政推進調査事業成果報告会(「GMP、QMS 及びGCTP のガイドラインの国際整合化に関する研究」 分担研究「医薬品流通にかかるガイドラインの国際整合性に関する研究」(GDP研究班))」からダウンロード可能である。冒頭に記したように、リンク先から講演・説明資料をダウンロードして頂き、忠実に中立の立場で勉強することをお奨めする。なお、本ウェブサイトがいつまで公開されるのか、或いは他のサイトに移転するのか不明であり、保証しかねる。
・説明会ウェブサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02903.html
・ダウンロード可能な資料:医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン
   1.    医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン検討の経緯
   2.    GDPガイドライン国際動向と日本の実施状況調査結果
   3.    医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン概要と解説(1)
   4.    医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン解説(2)
   5.    医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン解説(3)
   6.    医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインに対する質疑応答

 
 
*1:筆者の認識が正しければ、平成28年度報告としての「日本版GDPガイドライン(素案)」は、厚生労働科学研究成果データベースに公表されたが、昨夏説明会時に部分的に提示された平成29年度の「ガイドライン(案)」については開示公表されていない。
 
*2:倉庫業や流通業の業許可、本邦では国土交通省の管轄であり、通常の医薬品を取り扱う限りは、必ずしも厚生労働省への届出等も必要ないと認識している。ただ、今般の日本版GDPガイドラインに直接関わることではないが、海外の国においては、例えば、医療用医薬品について、英国MHRAではブローカーの登録が、米国FDAではThird-Party Logistics Providersが卸売販売業者同様の登録と報告が求められると認識している。国によって法規制が異なると同時に、医薬品の取り扱いに関わる業種・業態の行政管轄も異なることは認識しておいても良いかもしれない。
 
*3:Q&Aの1つとして、「再生医療等製品」については、薬機法規定に基づき適用対象外と明記されていたが、正直、薬機法の定義自体がやや難解な表現であることもあり、ここは理解し易く表記して貰いたかったと言うのが本音である。ちなみに、薬機法定義に基づき、医薬部外品・化粧品も対象外となるが、動物用医薬品は農林水産省の管轄なので対象外。また本邦では、原薬は「原薬たる医薬品」として対象に入り、治験薬は「治験に供する薬物等」とされていることから対象外になると思われる。
        《注》蛇足であるが、国によって「医薬品の定義」の法的解釈が異なるので、海外を相手にする場合は注意が必要である。
 
*4:例えば、倉庫業者・流通業者を含む3PL(Third-Party Logistics)のためのGDP参考資料としては、以下のものがある。
古田 ドマ「3PLとしてのGDP」, Pharm Tech Japan, Vol.34, No.14, p29 (2018)
 
*5:本文内には本省から地方局への事務連絡を表記したが、文言が宛先により変更されている。例えば、日本医薬品卸業連合会や日薬連などに対しては、下線部分が「貴会会員」とされ、さらに販売業者や薬剤師会に対しては、全体が「今後、卸売販売業者及び製造販売業者においては、本ガイドラインに基づいた取組が進められますので、ご了承いただくようお願いします。」と上手に言い回している。ある意味、さすがである。
        《注》この3種の宛先違い事務連絡は、下記URLの大阪府「ホーム > 健康・医療 > 医療・医療費 > 薬務課に関連する各種通知 > 各種通知等:平成30年度分」ウェブサイト内の大阪府文書発出番号及び発出日の平成31年1月22日 薬第3129号に掲載されている。
http://www.pref.osaka.lg.jp/yakumu/tuuti/h30.html

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