エチレンオキサイド滅菌の実践知識【第4回】

3.3 EO滅菌工程の確立
正しく作動する滅菌装置の準備ができた段階から滅菌工程の確立に入ります。
まず事前の作業として、以下を決めます。
 

① 滅菌対象物
対象製品の仕様、一次包装、二次包装、包材を明確にすること。

 

② パレットへの積載方法
滅菌物をどのような状態で、どのようなパターンでパレットに積載し、滅菌装置に投入するかを決定すること。 また満載の状態(Full Load)、満載でない状態(Partial Load)を決め、通常の滅菌工程でどの範囲の積載が許容されるかを明らかにしておくこと。

EO滅菌の場合、製品が確実に滅菌されるためには一次包装内の製品にEO分子および水分(水蒸気)が到達しなければなりません。

一般にEO滅菌では、パレットあるいは専用の積載用カートなどに一次包装品、二次包装品、個箱詰め製品、打箱入り製品、通箱梱包品などの形態の製品を積載し、この状態で滅菌器内に搬入し滅菌を行います。 製造業者にとっては、一度により多くの製品を処理した方が製造コスト上有利です。 しかし多くの製品を隙間なく詰め込むと、EOガスや蒸気の浸透が阻害され、結果的に積載製品の温度分布に大きなムラが出たり、結露によって製品が汚損されたりして、滅菌するうえでの様々なトラブルにつながることがあります。 その場合は、箱の間に1~2cm の隙間を開けることが有効です。 また製品積載量は一つの目安として、使用する滅菌装置の有効容積の75%以内ともいわれていますが、その限度については滅菌工程確立時に十分評価しておくことが必要です。

③ 滅菌工程中の品温(目標値)
製品や包材の特性から、滅菌時の温度条件(目標値)を決定します。 温度による影響が予期される材料を使用している製品では、許容される工程中の最高温度を明確にすることが必要です。 この例では、工程全体にわたって50℃超えない範囲で滅菌工程を設定することとしてあります。 一方温度が低いと、微生物の殺滅速度が遅くなるため、滅菌中の製品温度のバラツキはできる限り小さい方が望ましいということになります。 ここでは「バラツキは5℃を超えないこと」を目標とします。つまり滅菌中の温度範囲は45~50℃とします。

製品の特性により、滅菌器内でのコンディショニング(調湿工程)だけでは製品温度にバラツキが生じるような場合には、滅菌器への搬入に先立ち、製品を一定の温・湿度に保ったプレコンディショニングルームで一定時間放置し、温度、湿度を一定の状態にした上で滅菌器に搬入することも行われます。 この場合、プレコンディショニングルームの温・湿度管理、製品積載要領、放置時間(最短および最長時間)、プレコンディショニングルームからの搬出から滅菌器への搬入までの時間等について規定しておくことが必要です。 実際に製品に温・湿度センサーを設置し、どの程度の時間で製品の温湿度が一定になるかを把握することが重要です。 言うまでもありませんが、プレコンディショニング専用のエリア(プレコンディショニング ルーム)を使う場合、そのDQ、IQ、OQは、適正に実施しなければなりません。

 

④ 滅菌中の湿度(目標値)
一般的に採用される50%RHを目標値とします。 湿度が低いと滅菌に時間がかかります。 また製品温度のコントロールがうまく行きません。 逆に湿度が高すぎると、滅菌中に製品の水濡れや包材の変形などを起こす場合があります。 特に問題がない限り、湿度は40~60%あたりに設定します。

なお製品特性上、極力湿度をかけたくない場合は、EO濃度を高く設定する、時間を長くするなどの対応が必要になります。

 

⑤ 滅菌中のEO濃度(目標値)
先に述べた通り、通常滅菌中のEO濃度は、500~800mg/Lの範囲になるように設定します。 今回は600mg/L を目標値とします。
 

以上の条件を前提として、作業を進めることとします。

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