医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【第4章-3】⑥

【第4章-3】⑥ 基本設計

執筆:町田 進

(7) 機器仕様

 機器リストを確認し、基本設計段階では、機器の使用について、複数のサプライヤから情報を得ておくことは有効である。場合によっては、生産機器の仕様やP&IDの見直しが発生する場合もある。
 
 「シングルユースバッグを使用して、細胞培養からタンパク精製を行い、バイオプラント設備を構築すること」として、培養槽、精製設備、UF濃縮、無菌ろ過の各工程の機器に関してシングルユースバッグの検討を行った例がある。このバイオプラントでは、UF濃縮において、循環流量を大きくすることにより、シングルバッグの損傷や送液チューブ径が十分であるか、逆相カラムにて溶媒を使用した場合、シングルユースバッグからの溶出が問題とならないかといった懸念点がサプライヤからのヒアリングにより明らかとなった。
 
 他の例として、ケミカルハザードレベルの異なる多品目製造の固形製剤工場を建設し、機器を兼用化してキャンペーン製造を行うという構想を基本計画で構築した。その実現のために、固形製剤工程の各機器の封じこめ方式について、製造方針とした品目のうち、最も高いケミカルハザードレベルを要求する品目に合わせて設計する方針とした。しかし、サプライヤからのヒアリングによって、ハザードレベルが低い品目の製造については、本来は不要となる封じ込め容器の接続等の煩雑な操作が必要となることが判明し、運転操作を考慮するとハザードレベルに応じて、一部の機器を2種類に分けることが有効となった。
 
 基本計画において作成されたコンセプトとなる図書を基本設計で展開し、再検討を行なうことで設計の信頼性が高まる。その主な図書を以下に示す。

1)バリアストラテジー計画
2)マテリアルバランスおよびヒートバランス
3)P&ID
4)機器リスト(ローディングデータ、サイズ、ユーティリティ量、発熱量、排水)
5)平面図(建具、制気口位置記載)
6)内装仕上、防水
7)プロットプラン
8)空調システム図および室圧図
9)電気系統図および負荷リスト
10)排水系統図および排水処理方法
11)制御システム図


 これらの図書はさらに詳細設計においても見直しが必要であるが、各機器の調達工事に対する基本要求事項を網羅している図書となる。
 
 本章では、基本計画から、基本設計に展開する項目についての一般的な検討事項を示した。ただし、ここで示した基本設計の一部は、場合によっては基本計画で取り込む必要のあるものもある。基本計画、基本設計のいずれかで検討、設計を行うかは、技術的、コスト的なインパクトの要否によって決定されるべきである。
 
 実績が多い項目については、基本計画時点において、設計情報がメンバーで共有されており、リスクインパクトも共有されているケースが多い。新たな技術を取り込む場合には、思わぬ点でリスクインパクトがあり、後続の設計で見直しが生じる可能性がある。
 実績、技術の新規性の多少によって、不明点やリスクをリストアップし、その箇所が基、クリアーとなっているか確認していくことが必要である。
 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます