医薬品製造設備の基本、計画、設計、建設プロジェクトを学ぶ【第7回】

6) 官庁申請 (工程表ID 129~131)
本プロジェクトでは、必要な官庁申請として建築確認申請と消防着工申請を挙げています。 工場を建設するために必要となる官庁申請は、これらだけでなく、工場立地法や環境法、 高圧ガス取締法、労働安全衛生法、省エネ法、など多くの関係法があり、それぞれに申請 や届出が必要です。コントラクタは、顧客が行うこうした申請の支援を行う立場で、必要な設計図書などを顧客に提出します。申請から許可に至るまで、本工程表では建築確認申請で70日、消防着工申請に45日かかると設定しています。この日数は、所轄の場所やプロジェクトの内容・規模、その他の事情などによって変わります。また、事前に所轄官庁に相談や折衝などを行うことが多く、そのような期間も準備期間として、考えて置く必要があるでしょう。申請近くなったら、実際に申請した経験等をもとに、より詳細に申請の手続きと工程を把握するとよいでしょう。注意を要するのは、申請に必要な設計図面の種類です。必要な設計成果物が揃っていれば問題ありませんが、中には、P&IDが間に合わなかったり、多くの場合、配管図が間に合わない場合があります。工程が厳しい場合、この官庁申請の許可を得ることが、クリティカルとなりますので、事前に所轄の消防署に打診しておくといいと思います。所轄の消防と顧客との関係も影響します。申請には、きちんとした図面の提出が必須ですので、配管図が提出できる工程を組んでおくことが重要です。なお、申請に係る官庁との折衝は、必ず顧客で実施することが原則です。コントラクタが関わる場合も、顧客と共に進めます。コントラクタは、官庁と顧客の過去の対応履歴がわからないため、勝手に進めると迷惑をかけてしまうことがあります。すでに触れましたが、申請に必要な図面の種類は、全体工程に大きく影響する事項ですから、事前(これは早ければ早いほど良い)に顧客と確認し、必要があれば所轄官庁に確認を依頼する必要があります。場合によっては、申請用の図面を別途作成しなければならない場合もあります。高圧ガス該当機器の場合、官庁による中間検査や完成検査の日程・予約など、個別の工程を作成し管理するとよいでしょう。
 
7) 建設工事 (工程表ID 133~152)
無事、建築確認、消防着工許可が下りて、工事が開始できるようになりました。許可が下りた日から建設現場では、掘削などの工事が可能となります。建設工事では、図―XXのような組織を構築し、コンストラクション・マネージャーの指揮のもとで工事を遂行します。


図-XXX 工事体制表​
 
7.1 仮設工事
工事を開始する前に、工事事務所やショップファブ場、資材置き場、駐車場、給水設備など、工事用の仮設設備を設営しなければなりません。この工事は着工許可の前にできますので、事前に顧客と、仮設の想定場所、工事用用役(水、電気)の供給場所、入出門手続き、安全管理(火器使用要領)などについて打ち合わせておきます。工事を効率よく進めるためには、なるべく工事現場に近い場所を、仮設場所として確保します。

7.2 土木工事
いよいよ土木工事が始まりました。掘削からくい打ち、基礎工事にいたる一連の工事で、約2カ月を見ましたが、地盤の状況によりこの期間は変わります。杭が必要でない場合は、もっと少なくて済むかもしれません。土木工事で注意しなければならない事項の1つに、地中埋設物の遭遇があります。通常、基本設計条項や詳細設計条項をまとめる段階で、埋設物の有無について協議しますが、歴史の古い建設地の場合、以前の構築物の基礎や埋設物の記録がなかったりして、工事の最中に見つかることもあります。通常、設計の前に、地質調査の目的で、ボーリングが実施されますが、その場所はポイントでしかないため、多くの場合事前の発見が困難です。こうした場合、発見と同時に善後策を顧客と一緒になって検討します。基礎の再設計が必要と判断された場合は、土木設計者を建設現場に派遣し、出来れば現場設計を実施し、出来るだけ建設の手待ちを短くすることがポイントです。発見された古い基礎を新たな基礎で抱き込むように再設計を行い、手待ちを1週間以内に収めた例もありました。

7.3 鉄骨建て方
基礎が出来ましたら、早速鉄骨の建て方を開始します。建て方の順序に合せて次々に製作工場から納入される鉄骨の部材を組み立てて行きます。本工程では2カ月を見ていますが、さきに触れましたように、こうした鉄骨組み立ての段取りは、それまでの設計・製作の工程の結果に大きく左右されます。

7.4 建築工事
鉄骨の建て方と同時に、建築工事も進展します。屋根、壁、間仕切り、内装などが工事工程に沿って、整然と進行してゆきます。本工程では約5カ強を見ていますが、この工程の中には、以下に触れる、据え付け、配管、空調、電気、計装、DCS工事などの設備工事の期間が内包されています。

7.5 据え付け工事
鉄骨建て方の進展に合せて、機器の据え付け工事が開始されます。つまり、同時並行工事を行うことが一般的です。工事工程を短縮するため、こうした同時並行工事が事前に計画されます。据え付け工事では、ちゃんと据え付けられるように機器の足回りの情報を事前に建設現場におくって、工事担当者が確認出来ようにしておくことが必要です。
この段階では、全ての設計図書は、建設現場に備え付けられおり、工事担当者と建設現場に派遣された設計担当者並びにプロジェクト・エンジニアが、協力して工事内容を共有できる状態を作っておくことが必要です。特に、機械類の場合、塔・槽・熱交換器等に比較すると、構造が複雑で取り扱いが難しくなりますから、設計担当者が現場事務所に駐在し、機械の取り扱い上の注意事項を建設担当者に説明しながら、工事を進めることもあります。
また、粉体取り扱い機械(乾燥機、粉砕機)やコンベア・システム、並びに大型回転機のように、据え付けた後、綿密な据え付け調整の必要な機械類には、メーカの据え付け指導員派遣の計画を立てておき、コントラクタのエンジニアと協力して据え付けを完遂させるよう計画します。

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