再生医療等製品の品質確保のための要求事項【第4回】

 ここでは再生医療等製品製造の施設・設備の設計と 運用開始における考え方、および現状にて生じる課題について概説します。

●構造設備設計の進め方
 再生医療等製品など、細胞を製品とするために加工を行う、細胞製造を目的とした施設の構造設備設計では、第1回でお話しした「細胞製造性」と、それを考慮した「互換性」の考え方が重要になると考えられています。互換性について、基本的な考え方は、経済産業省の開発ガイドライン「23 ヒト細胞培養工程の操作手順変更における互換性確認に関するガイドライン2015(手引き)」にまとめられておりますので、こちらをご参照ください。
 
経済産業省 医療機器等の開発・実用化促進のためのガイドライン策定事業:
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/report_iryou_fukushi.html
 
 互換性確認とは、簡単に説明するならば、細胞に対して同じ所作(作業動作・時間)を行えていることの確認で、変わりやすく同一性の評価が困難な細胞に対し、構造設備や製造スケール等の変更により、工程が変更されていないことの評価を意味します。
 
 一般的な医薬品製造では、十分な経験と知識を有するエンジニアと相談し、実績のある製造装置をカスタマイズして導入することで、再現性よく操作を行える工程特性を確保することが比較的容易に可能です。また、不特定多数のユーザーに数多くの製品を供給するために必要な大量生産技術が充実した、成熟した産業分野であると考察します。従って、製造施設の構造設備設計および評価で最も留意すべき点は、『製品の無菌性保証』となります。
 これに対し、現状の細胞製造では、細胞製造性(生きた細胞)を深く理解したエンジニアが不足しており、再生医療等の多様性に対応した製造装置の導入手順は発展途上であると考察します。また、生きた細胞を製品にするという特性上、医薬品と比較して生産スケールにも制限が生じると推測します。そのため、構造設備の設計および評価では、製品の無菌性確保と同等かそれ以上に、生きた細胞を製品とする過程で生じる、工程のばらつきに対応できる操作手順の標準化、すなわち「互換性」の検証が不可欠となります。互換性を考慮し、製造の再現性を得るためには、我々(阪大紀ノ岡研)は、手作業や機械作業の区別に関わらず、工程操作の動作パラメータを理解し、製品ごとあるいは工程ごとで、基本動作(基本操作)の構築に係る検討を進めていく必要があると考えています。
 筆者は、以前、再生医療等製品の生産管理責任者の方より、「医薬品製造の構造設備設計では無菌が[主]ですが、(細胞製造では)細胞が[主]で無菌が[従]なのです。」というお話しをお聞きし、今も心に強く残っています。細胞製造は、現状では、まだ生産技術の知見に乏しく、適用可能な技術も十分ではない、未成熟な産業分野であることを理解する必要があると考えます。構造設備設計は、製品設計や工程設計において、従来の医薬品製造とは異なる多様性や、多くの課題を有していることを認識し、1つずつ解決しながら、ケースバイケースで進めていくことが必要な段階であると考察します。

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