新・医薬品品質保証こぼれ話【第45話】

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話
 

“慢心”とサステナビリティ


“パーティー券”という姑息なツールを使い、“政治資金規制法”を隠れ蓑として “裏金作り”を行ってきた自民党派閥の“錬金術”も、いよいよ終焉を迎えそうです。1月23日(2024年)、岸田首相はこの法律の改正を軸に政治資金問題の解決に向けて、派閥と“カネ・人事”を切り離すことなど基本的な考え方を示しました。昨年末に浮上したこの問題は、元日の能登半島の大地震に隠れ報道から遠ざかっていましたが、ここに来て裏金作りを行っていた三派閥の会計責任者や議員の逮捕・起訴という急展開を見せ、新たな局面を迎えています。法治国家を標榜する政治家が違法に多額の資金を得て、使途も明らかにしないという腐敗した状況は、到底国民の理解が得られるものではありません。 

"驕れる者は久しからず"。このことわざが示すように、人は立場を得て“慢心となり驕り高ぶる”と生来の欲望が顔を出し、今回のような品のないお粗末な事態を招きます。人間の人格形成が年齢に依らないことを今回の事件も示唆したわけですが、同じ状況・環境に置かれた場合、誰もがこのような失敗を犯す可能性が否定できません。"勝って兜の緒を締めよ"はこういった状況を諫めるために、古人が経験から導き出した大切な知恵ですが、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”が諭すように、同じ失敗を繰り返すのもまた人間の性です。 

このような“ことわざ”からも分かるように、人は良い状況にある時や勢いがついている時こそ、自重し謙虚になって、事の道理を弁え冷静に対処することが重要であり、それにより立場が維持でき、また、安定した企業経営にもつながって行きます。“継続は力なり”ということわざに象徴されるように、継続することによって初めて多くの経験を積むことができ、そこから多くの学びを得ることで状況が安定し、さらなる発展が可能となります。“慢心や驕り”は、この大切な“継続性”を断つことにつながることを知ることが重要です。

近年、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)といった言葉をよく耳にします。“継続は力なり”が示すように“継続や持続”の重要性は以前より分かっていたはずですが、改めて注目されるのは、今の世の中はそれだけ物ごとを継続すること、また、持続性を確保することが困難な状況にあるということの証かも知れません。特に“SDGs”は環境や社会の様々な問題に関連して、持続性確保の重要性が再認識されたことによりますが、いずれにしても、“慢心や驕り”といった人の心のあり様が“継続・持続”の妨げにつながることに気づく必要があります。

“慢心”の弊害は冒頭のような政治の問題だけではありません。この数年に製薬企業で発生した数々の不祥事の根本にも、この“慢心”があったと推察されます。製薬工場で日常発生する様々なトラブルやミスへの対応が、“慢心”がもとで疎かになり、それが習慣化することにより最終的に重大な品質問題を招くという流れは、違法製造の多くのケースで想定されます。特にマネジメントサイドの“慢心や驕り”が、こういった現場の対応に好ましくない影響を与えた可能性が、これまでの事例からも見てとれます。
 

 

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