私が経験したGMP、(@独り言)【第9回】
虫の話 ― 僕らはみんな生きている♪ ―
ベランダの隅の溝で、いつからあるのかわからない干からびたセミを見つけた。こんなところに入り込んでいたらカラスにも見つからない。戦時中はセミを焼いておやつ代わりに食べていた、と亡き母に聞かされたのを思い出す。セミは、ほかの虫と違って内蔵がほとんど入っていないため、カリカリに焼くと香ばしくておいしいのだそうだ。筆者はセミを食べることはなかったけれど、バッタのイナゴは佃煮になっているのをいただいたことがある。照りのある醤油色の甘辛い佃煮で、生きていた時そのままの姿で食用になっているので、虫が苦手な方には、ぞっとして受け付けられないだろうと思える外観。高級食材で結構お値段もするものなのだが、これ食べるのか・・・と少々引き気味にその姿を直視しないようにして口に運べば、エビなどとさして変わらない食感で味は悪くなかった。最近では食用コオロギを高たんぱくの食材として生産販売しているところもある。また、カイコの繭から絹糸をとる、ミツバチの集めた蜜をもらう、果樹などの農作物に被害を出す虫を捕まえてくれるというように、食用ばかりでなく「虫」は人の生活の役に立ってもいる。
夏の昆虫採集に人気のカブトムシ、クワガタ、セミ、アゲハチョウ、カマキリ、バッタなどの虫たちは、このあたりでもあまり見かけなくなってきていて、昨年、たまたま道路に転がって仰向けになったオスのカブトムシを見かけたが、なんだか角が小さくて弱々しく、生育中の栄養が足りていないように見受けられた。近隣のカブトムシが絶えてしまうのも時間の問題なのかもしれない、と思うと少々寂しい。とはいえ、まだまだいろいろな虫がいる。チョウ、トンボのように飛ぶもの、アリのように歩くもの、アメンボのように水の上に浮いているもの、ヨコバイ、アブラムシのように植物にとりついているもの、ダンゴムシやヤスデのように石の下のじめじめしたところを好むもの、中にはカメムシ、テントウムシのようにくさいにおいを出すもの、ハチやガムカデ、のように刺されると毒のある虫、蚊やアブ、ダニ、ノミのように人や動物から吸血することで、感染症を媒介する迷惑なものもいる。
「虫」という生き物のなかでも、「昆虫」というくくりでは少し条件があって、頭・胸・腹の三つの部位に分かれていて、胸の部分から足が6本でているもの、というものだ。足が6本ではないクモやダニは「昆虫」には入らない。医薬品工場では、防虫防鼠は必ず取り上げられる管理項目で、その中では、徘徊虫とか、飛翔虫といった侵入経路からの区別がなされている。それぞれの侵入経路に対して、有効な種々の対策が必要になるのだけれども、対策をするためには、まずはモニタリングをすることから始める。どんなところにどういう虫がいて、どのくらい数が存在するのか、増えるのか減るのかの傾向も把握する。モニタリングの結果から、どこから侵入するのか、を把握できれば対策がしやすい。
医薬品工場には、窓が少ない。窓から採光をし、外気を入れて構内の換気をするような工場もあったが、窓からの虫の侵入を防がなくてはならないので、できるだけ窓がない方がいいということだろう。窓を開けて換気をすることがなくても、一般的なサッシの引き戸には、構造上どうしても隙間が生じて、虫の侵入を許してしまうということもある。ただ、窓もなく、出入口もしっかり閉まる対策をしているのに、なぜか捕虫灯やモニタリングシートに虫が捕獲されているということはあるもので、完全に防ぐのはなかなか難しい。相手は生き物で、じっとしてはいないし、人の目につかないような小さな隙間からも侵入できてしまう。モニタリングシートに捕虫がありました。という報告でよく聞くのは「チャタテムシ」という虫で、これは壁の隙間などで増殖し、ちょっとしたヒビ割れや隙間から侵入してくる。季節的には初夏から夏に増えやすい。
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