ジェネリック医薬品の四方山話【番外編】

 5月20日、21日、梅雨入りの沖縄で第11回日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会の学術集会が開催された。学術大会の会場は沖縄の名護市にある万国津梁館で2000年の首脳サミットが行われた会場だ。270度のオーシャンビューの会場では、この4月からこれまでの「日本ジェネリック医薬品学会」から「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会」と名称変更を行っての初めての学術集会だった。学術集会には全国から300名の参加者が集まり大盛況だった。




 学術大会では直前にその時期が公表された「『2020年9月まで』にジェネリック医薬品市場シェア80%達成」が大きな話題となった。現状ではすでに70%近くまで達しているシェア率を3年強であと10%引き上げる。ただ会場でも「80%目標は現状のままでは厳しい」という意見が多かった。ちょうどいまは富士登山でいえば7合目、これから8合目までには胸突き八丁とよばれる急坂が待っている。
 この坂の険しさを乗り越すには、これまでのジェネリック普及施策の延長だけでは無理だろう。異次元の普及策が必要だ。そうした手立ての一つとして学術集会では「フォーミュラリー」に注目が集まり、会場から熱心な討論が行われた。
 学術集会では、フォーミュラリーを作成している東京女子医大、昭和大学、聖マリアンナ医大のシンポジウムがあった。ここでは聖マリアンナ医大のフォーミュラリーの例をご紹介しよう。聖マリアンナ医大では薬剤部の増原慶荘先生を中心に、2014年からフォーミュラリーを進めている。
 さてフォーミュラリーとは「臨床上の科学的根拠に『経済性』も加味して策定する推奨医薬品リスト」のことだ。同病院では薬事委員会の中にフォーミュラリー小委員会を設置し、医師、薬剤師が科学的な根拠に基づいてフォーミュラリー作りを進めている。ただその科学的根拠を探す作業がなかなか大変だ。まず学術論文を批判的に読める薬剤師を育て、それらの薬剤師が医薬品ごとにガイドライン、臨床試験・臨床研究の文献検索、添付文書、インタビューフォーム、薬価等の情報を収集し、同種同効薬の中から推奨優先順位を決める議論をフォーミュラリー委員会の中で行う。委員会では品目ごとに医師と侃々諤々の議論を交わすという。
 こうした議論から、例えば聖マリアンナ医大の例では、プロトンポンプ阻害薬(注射剤)では第1選択を後発品の「オメプラゾール」、第2選択を別成分の先発品「タケプロン」に設定している。そして医師が処方オーダー時にタケプロンを画面で選ぶと、「第1選択はオメプラゾールです」と注意喚起の表示が浮かび上がる仕組みにした。その結果、フォーミュラリーの「導入前3ヵ月」と「導入後3ヵ月」の比較で、タケプロンの使用量は80%以上も低下した。そしてプロトンポンプ阻害薬の後発品の採用によって薬剤費は約27%減少したという。

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