医薬品の外観目視検査における要求品質の明確化のために【第23回】

抜き取り検査(AQL)による検査の妥当性評価

1.抜き取り検査(AQL)による検査の妥当性評価
1.1 全数検査と抜取検査について
 製品品質を検査する方法には、抜取検査と全数検査の2つがある。
工程で品質を作り込み、不良を限りなくゼロにすることができれば、抜き取り検査も可能だが、GMP事例集2013には、以下のような記載があり、無菌医薬品に関しては、原則として全数検査を行うこととされている。原則としてとはあるが、この表現は、真に(常に)抜取り検査で異物の混入した製品を出荷することを防止できることを検証しなければならないことを意味するものである。

  [問]GMP24-12(無菌医薬品に係る製品の製造管理) 医薬品・医薬部外品GMP省令
     第24条第2号の規定に関し、点眼剤に係る製品の製造の工程内管理に係る異物検査は、
     抜取り検査により実施してもよいか。
  [答]異物の混入した製品を出荷することを防止するという目的のためには、原則として全数
     検査を行うこと。
     なお、検査の方法、結果の判定の方法等は製造業者等として定め、あらかじめ製造管理
     基準書等に明記しておくこと。


 もちろん、破壊検査の場合は、全数検査することはできないので、抜取検査を実施せざるをえない場合もあるので、全数検査と抜取検査を、目的と手段に応じて、適切に使い分けていくことが求められる。例えば、凍結乾燥製剤については、乾燥物表面は全数検査で確認できるが、乾燥物の中の異物は検出できないため、抜取り検査で溶解試験を追加実施する必要があるかも知れない。

1.2 AQLによる抜取検査(JISZ9015)
 AQL(合格品質水準)とは、Acceptable Quality Level または、Acceptance Quality Limit (JIS)の略称で、製品の抜取り検査時の合格品質水準である。AQLは、アメリカの国防総省が、武器などに関わる部品の調達時に品質確保を図るために設定した MIL-STD-105 が基本となり、日本では、戦後、電子部品などの取引を通じて、海外大手メーカーとの取引時に導入されたといわれている。
 AQLによる抜取り検査の特徴は、生産者と消費者の2つの立場を考慮して設定した品質基準を明確にしていることである。未検査の製品があることを認識した上で、統計的にその検査のリスクを説明することができる。
 JISZ9015のAQL指標型抜取検査方式は、抜取り検査の検査コストと品質の確保のバランスを考慮し、直近の品質状態に応じて、適切な抜き取り数を選択する可変的な検査手法である。品質が低下した時に消費者への品質確保を優先し、「きつい検査」に移行して検査を厳しくし、原因が改善されるまで、合否の判定を行う検査を停止して、責任者が是正処置の効果を判断し、了解するまで徹底的に改善を行う仕組みをとりいれている。例えば、連続5ロット以内の初検査で2ロットが不合格になった場合、きつい検査に移行するような考え方である。
 逆に、製品の品質がよく、安定している場合は、検査費用を削減するために、「ゆるい検査」に移行するという柔軟性を持つ検査である。例えば、きつい検査のときに、連続5ロットが初検査で合格になった場合、なみ検査に復帰するような考え方である。

1.2.1 AQLによる抜取検査手順
 JIS Z 9015-1の抜取り検査手順は、AQL抜き取り表(図表1)及び検査の一回抜取方式(図表2)を参照し、以下のような流れになる。

●目標となるAQLを設定する。
●検査の厳しさの水準と抜取方式を決定する(なみ検査・1回抜取方式など)。
●ロットの大きさを決め、検査水準と抜取表で照らし合わせ、サンプルサイズ文字を探す。
●サンプル文字とAQLとを主抜取り表で確認し、サンプルサイズとAc(合格判定個数)と
 Re(不合格判定個数)を出す。
●ロットからサンプルを抜き取り、検査・試験を行う。
●ロットの合否を判定し、合格であれば出荷、不合格であればロットごと処置する。
 

 

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