GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第62回】

品質システムについて。
品質システム
1.園児バス置去り事件から学ぶ
静岡県で幼稚園の送迎バスに5時間も置き去りとなった3歳児が死亡した事件があった。記者会見で、事件当日は、臨時で理事長がバスを運転することになり、次の点についてチェック等のミスが重なったことが公表された。
②降車時、複数人によるダブルチェックをしていなかった
③クラスの補助職員が9時のチェック期限前に確認し、最終の登園状況を確認していなかった
④登園予定の園児がクラスにいなかったにもかかわらず、クラス担任が職員室や保護者に確認しなかった
幼稚園での事故であるが、医薬品の製造所や倉庫管理などでの取り違いなどのヒューマンエラーにもつながる事例である。製造所でも起こりうる事象として、リスク分析及びCAPAとして考えてみる。
①子どもたちの降車を確認していなかった
今回、運転は、通常の運転者が欠席のため、臨時に園長でもある理事長が行った。代行や臨時など、通常の作業者に代わる者が行う場合、逸脱等事故につながるケースは多い。通常での作業の引継ぎ等が十分でなく、行うべき作業が抜け落ちる可能性が高い。今回の事故では、理事長たる責任者であることが更に事故を大きくしてしまったと考えられる。現場の者は、責任者は、いろいろと指図をする立場であり、現場での管理方法を把握していると思い込んでしまう。しかし、責任者が現場の管理方法を十分把握していないことは多い。製薬企業のGMP違反事例の多くが経営者や工場長、製造管理者などがその状況を把握していない状況であった。今回の事件では、降車の確認は、手順化されていないようだが、通常、運転手が確認していたとの報道もある。理事長は、そのことを承知しておらず、同乗した補助職員が確認を行うと思い込んでいた。しかし、補助職員が降車の確認を行ったかどうかの確認を行っていなかった。同乗した補助職員に降車の確認を実施したか、実施した確認が困難なら、降車の確認をするように指示すれば防げたか可能性は高い。
②降車時、複数人によるダブルチェックをしていなかった
ダブルチェックの必要性はよく言われる。しかし、ダブルチェックが形骸化していることは多い。今回の事例でも、運転していた理事長と補助職員が2人でチェックすることで、ダブルチェックとなる。しかし、バスの後部座席まで、どちらかが確認をすれば、ダブルチェックが必ずしも必要とはいえない。運転者と補助職員が双方で声掛けをし、後部座席のチェックを行った若しくは行う確認をすることが必要である。GMP的に言えば、後部座席までの確認した記録を残すべきであろう。
③クラスの補助職員が9時のチェック期限前に確認し、最終の登園状況を確認していなかった
登園の確認は、アプリを利用していたと報道であった。しかし、登園の入力は、同乗した補助職員が乗車した園児6人分をまとめて行っていた。クラスの副担任である補助職員は、そのアプリを最終確認せず、亡くなった女児が欠席したと思い込んでいた。バスの補助職員との確認がされていれば、降車しない園児がいたことに気付いたかもしれない。製造所における取り違いミスは、払い出し側と受入側の確認不足によることが多い。園児を荷物に例えることは失礼だが、受け渡しの際の伝票等の利用やロジスティックシステムの利用することだけで、問題は解消しない。今回の事件のように、アプリを利用することに頼って、確認不足に陥ることは十分考えられる。受け渡し時の担当が双方で声掛けを行うことで十分かもしれない。お互いが忙しい時ほど、コミュニケーションが必要なものである。直接のコミュニケーションが困難な時、アプリ等のシステムを利用し、入力や確認するタイミングにずれがないようメッセージ機能を導入も考えるべきである。
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