ラボ・生産設備における省エネルギー化【第3回】

 ラボ・生産設備における省エネルギー化の連載において、いよいよ省エネの基礎理論(電気編)になります。
さて電気というエネルギーは他のエネルギー形態への変換が容易で、かつ制御が容易です。従って熱、光、動力などの目的で利用が多く身近なエネルギー源です。今回のテーマは電気エネルギーを利用する機器類の特性を理解することで電気の省エネルギーを考えるヒントを得たいと思います。電気で省エネルギーに係わる機器などについて説明します。
 
1 受変電設備
まず、発電所、変電所を経由して送電された電気を施設に受け入れる部分が、受変電設備です。この設備自体は非常に高効率な機器ですが、単純な効率計算で機器損失量が決定されるわけではありません。その特性を知ることで省エネルギーのヒントを得ることができます。
 
1.1 変圧器のエネルギー損失 
 変圧器は技術革新が進み、ここ十数年で省エネ化は飛躍的に伸展しました。もちろん危機寿命が約30年程度と云われますので、そろそろリニューアルされている施設も多いかと思います。下図に容量と効率の相関関係を示します。



 変圧器の損失は鉄損と銅損があり銅損は負荷の自乗に関係します。変圧器の損失計算は次のように示されます。

 

 
     損失(Kw)={L1+L2^2}W  ここで各数値の値は
 
     W [KVA]      トランス容量
     P [-]         平均負荷率  
     Φ           力率      
     L1 [Kw/KVA]   無負荷損 
     L2 [Kw/KVA]   負荷損  
 
 上記の式で示される効率数値を図にすると次のような形で示されます。一般に製造メーカにより上記数値は変化するので参考値として実際にはメーカーデータを参考にして下さい。


 
 この結果で分かることは次のようなことです。
 (1)変圧器は負荷の大きさにより総合効率が変化し、従来形ほどその差は大きくなります。
 (2)高効率型変圧器と従来型変圧器との差は概ね1%~1.5%程度の差分ですが、高効率形は負荷率全般にわたりフラットな形をしているので変化の大きい負荷を抱える施設でも安定した性能を発揮できます。
 (3)この負荷率による変動の大きさから考えると、大は小を兼ねず不必要な変圧器は整理統合したほうがよい。
 (4)勿論未使用時でも変圧器は無負荷損がかかっていますので、その場合は電源を切っておく
 
1.2 温度環境
 変圧器は周囲温度により、その効率が変化します。一般に変圧器の周囲温度は30℃程度で設計されておりますので、これ以上の温度環境におかれますと巻線抵抗が増加し効率が下がります。特に室内などに設置される場合には換気設備などを配慮する必要があります。また屋外設置でも日射により温度が上昇する場合があり注意が必要です。なるべく日射のない涼しい場所がよろしいと思います。
 
1.3 力率改善
 力率は、電動機などの影響で一般的に遅れ位相となります。これは電気料金の力率調整契約金に影響いたします。そこで一般的には1次側(高圧側)に進相コンデンサーを設置して電力会社から割引率を得ることができ、最大で15%の基本料金割引となります。ただし、これは1次側の力率改善に云えることであり、残念ながらこの方法では2次側の力率を改善したことにはなりません。一般的な施設では変圧器からユーザーまでの距離に比例して損失が増大されます。ユーザーまでの距離が長い大規模施設などではユーザー側に低圧進相コンデンサーを設置することで線路の皮相電力分を改善する方法も有効です。

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