ラボ・生産設備における省エネルギー化【第4回】
前回は、電気に関する基礎理論について述べましたが、今回は熱に関する基礎理論の紹介です。熱エネルギーは加熱、冷却操作などのイメージが強いのですが電気エネルギーへの変換などの多様な形態を持っています。
熱源設備は、最近の技術革新により格段に性能が向上しており、省エネに貢献しておりますが、場合によっては効率が低下したままで運転使用していて、残念な結果になっているケースも見受けられます。
今回の講座では適切な機器の使用方法などを中心に話を進めていきます。
1 ボイラー
熱といえば、まずボイラーが筆頭でしょう。ボイラーにはいろいろな種類がありますが、ラボ、製剤設備などで用いられるのは最近では小型貫流ボイラーがほとんどです。 数十年前の筆者が設備設計に従事したころは炉筒煙管ボイラーが主役でしたが法規制の緩和、制御技術の向上、水処理技術の向上などによりこのような形になってきたのでしょう。それにLNG(液化天然ガス)の普及なども一因かもしれません。ボイラー関連の省エネ着眼点を以下に示します。
1.1 ボイラーの利用温度、圧力の見直し
ボイラーの蒸気の用途には給湯用(40~60℃)、空調用(40~60℃)、殺菌用(60~90℃)、滅菌用(130~140℃)、冷凍機用(150~160℃)などが一般的なところです。従って、ボイラー発生圧力はほとんどが0.7~0.8Mpaであるので使用先で必要圧力まで減圧して用いています。この状況が省エネルギー対策の元となります。
減圧する際に失われる運動エネルギーを利用することで発電、蒸気圧縮などの単位操作をすることが可能です。投資対効果の検証が必要となりますが、長時間運転で蒸気量が大きい場合には採算が採れると思います。
またボイラー本体の設定蒸気圧をできるだけ下げることはエネルギー削減につながります。これは使用温度、圧力が低いほど利用できる潜熱エンタルピが増加することと、排気温度が下がる事により加熱に余計な熱量を使う必要がなくなるからです。
1.2 ドレン、ブロー、排気の廃熱利用
ドレン水は一般的には開放タンクでフラッシュさせ、大気圧にしたものを回収するのが一般的です。すべてを回収すると15%程度の回収効果があります。またドレン量が多い場合にはスクリュウ圧縮装置を用いた蒸気圧縮システム(VRC)を用いることもできます。
ブロー水は100℃近くの温度を持っています。ブロー水からの熱回収は基本的に熱交換が必要でしょうが0.5~1%程度の熱が回収できます。
燃焼ガスは160℃~220℃程度の温度を持っていますが、ガス成分には水蒸気、炭酸ガス、窒素、未燃焼カーボンなどが含まれています。燃料に腐食性がないことを確認できた場合には、潜熱熱回収ができれば大きな省エネ効果を得ることができるでしょう。また腐食があるとしても、更新交換対策を十分検討すればA重油、灯油、LPGでも潜熱回収することは可能です。運転時間、腐食速度などを検討して導入されては如何でしょうか。燃料の種類によっても異なりますが10%以上の熱回収が可能です。特にLNGはほぼ硫黄を含んでいないのでうまく活用したいものです。
左図は単機の熱効率を示します。右図は高負荷状態で運転し、負荷がなくなった場合で間欠運転をしたボイラーの効率を示しますが、老巧化した機器放熱ロスは10%程度と、新品で5%程度を示したものです。
1.3 空気比の管理
ボイラーは適正な空気比をもって運転するように指導されています。空気比とは燃料が理論的に燃焼した場合の空気量に対して、実際に供給される空気量との比率の事です。燃焼には寄与しないガスの加熱分が排気ガスとなり余分な熱ロスを引き起こします。しかし、あまり理論値に近くなると黒煙の発生などの問題を起こしますので注意ください。
ラボ、製剤工場ではほとんどが5Ton未満のボイラーですので液体で1.15~1.3、気体で1.15~1.25程度ということです。
1.4 ボイラーの負荷率と台数運転制御
ボイラーは設計効率が高くても低燃焼時には効率が著しく下がるのが一般的な傾向です。従って蒸気負荷に合わせて複数台のボイラーで台数制御を行い、適正な負荷率で運転させることが高効率運転に繋がります。
また、複数のボイラーを並列運転している場合は、蒸気使用量に応じてのスケジュール運転による対応もありますが、ボイラー保有水の加熱に使用される分が大きくなりますから、この点も考えての運転計画・運転台数制御による効率化を考える必要があります。
同一型式、同容量ボイラーが複数台あれば、自動最適化運転が可能です。シーケンサーなどを用いれば能力が異なるボイラーの制御も可能です。ただし設計費、製作費が大幅に嵩むかもしれませんのでご注意ください。またボイラー負荷に大幅な変動がある場合には、設置スペースに余裕があれば、蓄熱タンク(アキュムレーター)の設置なども視野に入れボイラーの安定運転を目指すのも良いかもしれません。
左図は単機の熱効率を示します。右図は高負荷状態で運転し、負荷がなくなった場合で間欠運転をしたボイラーの効率を示しますが、老巧化した機器放熱ロスは10%程度と、新品で5%程度を示したものです。
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