GCP入門【第21回】

2021/09/03 臨床(GCP)

説明と同意というGCPで最も重要なテーマについて紹介をする。

GCP省令第51条(説明文書)

 治験責任医師は被験者になるべき者に説明文書を提示して説明しなければならない。この説明文書に記載すべき項目が第51条第1項であり、第2項は説明文書に記載してはいけない事項、さらに第3項は表現方法に関する条文である。
 説明文書に記載しなければならないこととしてGCP省令で17項目、ガイダンスで18項目が挙げられている。治験の目的や方法はもちろんのこと、健康被害が生じた場合の連絡先や補償について説明することになっている。この他に、被験者が治験への参加に同意した場合でも随時これを撤回できること、被験者が治験への参加に同意しない場合であっても不利益は受けないことも説明事項になっており、これは旧GCPの時も説明文書に記載すべきこととされていた。
 これらとは逆に、説明文書に記載してはいけない事項としては次が挙げられる。被験者に権利を放棄させる言葉、あるいは治験責任医師や治験依頼者の責任を免除するような言葉、これらは説明文書に記載してはいけない。
 説明文書は、言うまでもなく被験者が理解可能な言葉でなければならない。そのためには医学用語などの専門的な言葉を避けて、理解しやすい文章でなければならい。必要に応じて漢字に振り仮名を用いても良いだろう。第28条では治験審査委員会の構成員として非専門家を加えなければならないことをGCP入門【第15回】で説明した。この非専門家の役割というのが、被験者にとって説明文書が理解しやすい記載になっているか否かを、あくまでも医学知識のない一般人の立場で意見を述べるということである。

 一般的に「同意説明文書」あるいは「説明同意文書」、略して「同説」という言葉が治験の現場でよく使われるが、GCPで定義されているのは「説明文書」と「同意文書」の2つの言葉であり、GCP省令にもガイダンスにも「同意説明文書」のような言葉は出てこない。いや、「出てこなかった」という過去形が正しい。本年7月30日のガイダンス改正で、医薬品の承認後も治験を製造販売後臨床試験に切り替えて継続する場合の手続きが第56条に追記され、この該当部分に「治験の同意説明文書において」という文言が出てきた。従来からガイダンスで「説明文書と同意文書は一体化した文書又は一式の文書とすることが望ましい」という説明が散見されてきたが、おそらくこれが「同意説明文書」ということなのだろう。
 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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