ゼロから学ぶGMP【第6回】
GMP省令の記載事項(続き)
5-3職員(第6条)
第6条は第1項から第4項からなっており、いずれの項も製造業者が製造部門と品質部門の責任者と業務が適正に遂行される人員の配置を求めています。製造業者というのは通常は法人を指し、具体的な実行者を特定してはいません。この事については事例集のGMP6-2に以下の記載があります。
「製造業者等とは、製造業の許可(認定)を受けた者(個人又は法人)をいうが、GMP省令の規定の実際の運用においてはGMP省令第6条第4項の製造所職員の責務及び管理体制において製造所に関し製造業者等としての権限を付与され、製造業者等としての責務に責任を有する者(例:業務を行う役員、工場長等)を規定しておくこと。なお、品質システムを維持・改善していく上で、資源の配分の決定権を持つ製造業者の品質に対する認識とリーダーシップは極めて重要であることにも留意すること。」
第1項では製造業者の責務として、製造部門と品質部門の責任者を置くことを求めています。ここではGQPで規定(注)されているような、業務経験は特に求められていませんが、省令に記載されているように業務を実施し得る能力を有する者を指名することは当然のことです。以前はそれぞれ旧GMP省令第2条に基づき製造管理責任者、品質管理責任者と呼ばれていましたが、改正後は省令からこれらの責任者の名称は消え、それぞれ「製造部門の長(責任者)」、「品質部門の長(責任者)」となっています(製造管理責任者や品質管理責任者の名称を使ってはいけないということはありませんが、知識として知っておく必要はあります)。なお製造管理者は品質部門の長を兼任することは認められていますが、製造部門の長を兼任することは認められていません(事例集GMP5-2)。
第2項では、製造部門、品質部門の業務ごとにそれぞれ責任者を置くことを求めています。製造所の規模や業務の種類等により異なりますが、製造部門では工程ごとの責任者(工程責任者)や倉庫の管理責任者等、品質部門では品質管理(試験実施及び試験結果の評価部門)の責任者の他、出荷判定者、バリデーション責任者、変更管理責任者、逸脱管理責任者、品質情報責任者、回収処理責任者、自己点検責任者、教育訓練責任者、文書管理責任者などを置くことが一般的です。これらの責任者として指名された者の氏名とともに図にしたものが「GMP組織図」で、これが第4項の記載の「職員の責務及び管理体制を文書により適切に定めなければならない。」を満足させるものです。但し、改訂したときには、その日付と改訂項目とその理由を明らかにしておく必要があります。先にも述べたように、この図の中に製造業者としての権限を有する者を明記することが大切です。それぞれの部門内での兼任は問題ありませんが、品質部門の製造部門からの独立を妨げないようしなければなりません。またそれぞれに代行者を指名しておくことも業務運営上大切なことです。
PIC/Sでも第2章にPersonnel(職員)に関する記載があります。印象的なのは原則の冒頭に記載されている以下の文言です「満足できる品質保証システムの確立と維持及び適正な医薬品の製造はヒトに依存している。」GMPに限らず、生産を含むすべての企業活動の基本はヒトであることは“書かずもがな”の事ではありますが、重要な点をついているという印象です。
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