医薬品開発における非臨床試験から一言【第19回】

蛋白結合についての薬物動態試験の評価ポイント

薬物動態試験における蛋白結合の評価を、薬物相互作用も含めて解説します。本稿では2018年に厚生労働省から発出されました「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」を引用しました。他にも蛋白結合に関する報告を参考にし、また、我々が経験しましたSH基を介したアルブミンとの可逆的な共有結合の研究も加えています。

臨床現場では治療目的を果たすために複数の薬物を処方する場合が多く、併用薬物による相互作用に注意が必要です。薬物相互作用により重篤な副作用が現れたり治療効果が減弱したりする場合があることから、新薬の開発では薬物相互作用の可能性と程度を適切に評価し、患者の不利益とならないようにする必要があります。蛋白結合は薬物相互作用の課題に含まれ、基本的な検討の積み重ねと、状況に応じた的確な判断が大切です。

経口投与された薬物は消化管で吸収された後に、多くは血漿蛋白質と結合し循環血流に乗って運ばれ、さらに、薬効標的組織を含む組織内では蛋白質や組織成分と結合して存在しています。血漿と組織の間の薬物の移行は非結合型によると考えられており、受動輸送と能動輸送により運ばれます。

また、蛋白結合した薬物が、他の薬物により置換されると、元の薬物の非結合率の変動が起こり、薬物相互作用の原因となることがあります。これは、個々の薬物で蛋白結合する強さが異なるために生じる現象です。薬物の分布にトランスポーターが関与すると、能動輸送で組織に取り込まれます。薬物とトランスポーターとの親和性も、蛋白結合と同様に個々の薬物で異なります。

薬物が血漿中において結合する蛋白質は主にアルブミンですが、一部の薬物はα1-酸性糖蛋白質(AGP)、リポ蛋白質、免疫グロブリン等に結合します。In vitroで血漿蛋白質との結合率が高い(90%以上)薬物の薬物相互作用を検討する際には、結合する蛋白質の種類と結合の程度を明らかにしておく必要があります。

アルブミンは585個のアミノ酸からなる分子量約66,500の蛋白質で、健常人の血漿中に存在する基準値は約3.8~5.3 g/dLと報告されています。また、アルブミンは他の血漿蛋白質に比べて分子量が小さく、量が多いため、血液の浸透圧調整の役割を担っています。アルブミンには2つの薬物結合サイトがSudlowらによって報告され、サイトⅠ、Ⅱと称されました。さらに、ジギトキシンなどが特異的に結合するサイトⅢが発見されました。それぞれのサイトの認識部位の研究が進んでいます。

我々がN-アセチルシステン(NAC)の蛋白結合を研究していた時に、熊本大学の小田切先生らの研究チームが、アルブミンのドメインⅠに注目されていることを知りました。このドメインにはCys-34が唯一遊離状態で局在し、この残基とSH含有化合物との共有結合物の形成について定量化法を開発されました。前述の蛋白結合サイトⅠ、Ⅱ、Ⅲとは異なり、SH含有薬物が可逆的に共有結合します。

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