医薬品製造事業関連の知財戦略【第4回】

10.プロパテントの時代
 少し以前の話になりますが、1998(平成10)年に抗潰瘍薬(シメチジン)に係る特許権を侵害したとする訴訟において30億円を超える損害賠償などの支払いを命じる判決がなされました。特許権を重視する気運が高まりつつある時期にあり、また、法律改正によって損害賠償の立証が容易化された直後でもあるため、当時としては極めて高額の賠償金を認める判決として注目された判決です。
 
 この判決の6年前の1992年、米国でカメラのオートフォーカスに係る特許権の侵害訴訟に対する判決があり、被告企業は当時のレートで165億円という高額の賠償金で和解したという事件がありました。この事件では、その後さらに、他の日本企業数社に対しても同様の請求がなされ、いずれも25~70億円の和解金が支払われました。この時期に特許権侵害を巡る訴訟が多発し、多額の賠償金(和解金)が支払われた原因は様々考えられますが、1985年に米国において特許権重視の政策が鮮明となったことが大きく影響していると考えられています。この特許権重視の政策をプロパテント政策と呼びますが、技術開発の成果として確保した特許権によって国際的な産業競争力を強化することが必要であるとの認識に立って進められたものです。このプロパテントの方向は、先進国において、国際的なトレンドとして定着してきました。冒頭で述べました日本における関係法律の改正もその現れの一つです。

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