医療機器業界の話題と今後の展望【第4回(最終回)】医療機器のGMP

はじめに
 GMP (Good Manufacturing Practice) は、その言葉が表わす通り、質の高い製造を実現するための工程や管理の手法を指している。医薬品においても医療機器においても、GMPが重要であることに変わりはない。ただ、前回述べてきたような医薬品と医療機器の違いは、GMPのアプローチの仕方や実践の仕方についても違いをもたらしている。今回はそうした観点から医療機器のGMPについて述べてみたい。
 
医薬品GMPとの大きな違い
造設計基準を当てはめにくい
 日本の薬事法では、医薬品や医療機器の製造業者や製造販売業者は、一定の基準を満たしたうえで許可を得ることが求められている1。その際に、製造業の許可に関連して、製造所の構造設備が厚生労働省令の定める基準に適合することが条件となっている(法第13条第4項1)。
 ここで、「構造設備に関する基準」という概念は、医薬品の製造所にはなじみやすい。医薬品のような化学製品の製造事業所は、原材料の投入から始まって様々な処理や化学合成や精製の工程などを経て、最終製品の合成に至るプラントのような設備であることが多いからである。このような原材料から最終製品までの一貫した製造工程を備えた施設が前提であれば、製造業の許可の要件としての構造設備の基準は重要な意味を持つ。
 一方、医療機器の場合には、このような考え方だけでは、多くのケースに対応することは難しい。加工組み立て産業である医療機器の場合、部品や材料が別な事業者から調達されてくる場合が多い。それらの部品や材料は必ずしも医療機器の製造事業者から調達されるとは限らない。むしろ一般的な工業製品としての部品や材料を製造している企業からの調達のケースであることが多い。製品を設計し、最終的に製品を組み立てて市場に供給するメーカでは、組み立ての工程や検査の工程に対して責任を持って臨んでいるが、場合によっては、そうした工程の一部は外部に委託して実行されている場合もある。「ファブレス」という言葉があるように、一般の工業製品の場合には、開発や設計に集中し、製造工程を一切保有しない製造業も存在する。この場合には薬事法にいうところの「構造設備基準」をどのように考えるべきか、また当てはめるべきか、ということが課題となる。
 
部品や材料の供給
 医療機器は部品や材料によって構成されている、ということが、医薬品と異なる大きな特徴である。部品や材料の選択や調達、そしてそれらの品質管理は、最終製品について責任を持つメーカがその一義的な責任を負うということが、一般的な工業製品での考え方であり、医療機器でも同様の考え方が示されている2
 欧米ではこうした考え方から、医療機器のGMPにおいては、一般の工業製品で適用されるISO9000などの品質マネジメントシステムの考え方を適用している。医療機器に関しては、ISO9001に基づいて2003年に制定されたISO13485が、GMPを支える標準的な考え方として広く受け入れられている。
 品質マネジメントシステム(QMS)によるGMPの考え方は、工場の設備や構造についての基準を定めるのではなく、製品の設計・開発、購買、製造及びサービス提供、監視や測定、不適合製品の管理、データの分析、改善、といったプロセスと、それらを運営するマネジメントのシステムなどについて規格を定め、規格に則って運営することにより、製品の品質保証を行おうとしている。したがって、規格に合致しているかどうかの監査にあっては、事業者が運営するプロセスが、規格が求める要件を満たしているかどうかということが重要な視点となる。
 例えば、ファブレスの事業者であっても、製品の設計開発のプロセスや、製造やサービス提供のプロセスに関しては、規格が求める要件を満たしているかどうかという意味での監査の対象となり得る。事業者は規格の要件を満たすプロセスが存在し、かつ、それらが機能していることの記録を提示するなどして示すことが求められる。部品や材料の品質管理に関しては、設計・開発、購買、さらには改善などのプロセスのなかでどのように扱われているかがテーマとなる。

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