業界雑感 【2020年8月】

 OEM ( Original Equipment Manufacturing ) という言葉を初めて聞いたのは30年近くも前、異業種の生産部門の人間が集まる研修でのことだったと記憶している。医薬品の製造現場から工場の改善スタッフ、生産管理などを経験した後、本社部門で生産部門の将来戦略を考え始めたころに受講した研修だった。当時医薬品の生産しか知らなかった自分には、OEMの本来意味である相手先ブランド製造、いわゆる他社品を製造受託したり、自社品を製造委託したりするという発想は全くなかったので、ほかの業界ではOEMが当たり前になっているという話に驚いたものだったのだが、医薬業界にこの製造委受託のビジネスモデルを適用するのは難しいとも考えていた。当時の薬事法では医薬品製造業者(現在の定義では医薬品製造販売業者になる)自身が少なくともなんらかの製造行為(工程)に携わる必要がある「区分委託」までしか認められていなかった。製造コストについてもまだまだ原価低減の余地があり、他業種のようにコストダウンを目的とした製造委託など考える必要もなかったのである。
 潮目が変わったのは2000年頃から、2002年には厚生労働省から「医薬品産業ビジョン」が発表され、国内大手製薬メーカーのM&Aが進む中で、医薬品工場については生き残るための競争力強化が議論の中心となった。2005年4月の薬事法改正で医薬品製造の承認・許可制度が見直され、すべての製造工程を外部委託することが可能となったことを契機に、それまで「区分委託」という方法で製造工程の一部を外部委託していたものを全面委託に切り替えたり、自社製造から外部委託製造(アウトソーシング)に変更したりする動きが活発となってきた。

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