医薬品品質保証こぼれ話【第18回】

感染症時代への対応

今回の新型コロナウイルスによるパンデミックにより、世界中の多くの人が感染症というものの怖さをいやがおうにも知らされたと思います。また、今回のウイルス(COVID-19)のように発症の数日前から感染力を持ち、撲滅が容易でないウイルスが今後も発生することが否定できないことを考慮すると、これからは、感染者の増減を繰り返す中でウイルスと折り合い、共存しながら社会生活を営むことを誰もが視野に入れる必要があります。いわば、“感染症時代”といった、これまで我々が経験したことのない世の中が想定されます。

このような状況においては、世の中のさまざまなシステムも原点に立ち返って再構築する必要に迫られます。また稀に、サイトカインストームと言われる免疫の暴走により症状が急変し、最悪の場合、死に至るという現実と向き合うとき、人生における価値観や生き方の転換といったことも視野に入れる必要があり、豊かさと便利さを求め続けてきた戦後社会の生活や生き方を根底から見直す必要にも迫られるでしょう。こういったことを含め、社会や人生の枠組みを新しく創り替える必要性、いわゆる、パラダイムシフトがあらゆることについて求められると考えられます。今後、日本だけでなく、世界の多くの国がこの課題と対峙することになり、同時に、あらゆることが世界規模で進む今の世の中においては、グローバルな視点に立ち国際連携の下で、この新たなパラダイムを模索することが求められるでしょう。

国内において検討が求められるパラダイムの変換に関する重要な課題としては、先般より話題にあがっている“学期の9月始まり”などがありますが、“医薬品の安定供給の確保”もその一つと言えるでしょう。この課題の鍵を握る、重要医薬品(Key drug)の原薬の安定調達は特に重要です。これに関しては、従前より、“中国等海外原薬の品質確保と安定調達”のセミナーの場などにおいても繰り返し取り上げ、また、本稿においても、前回、今回のコロナ危機に関連して少し触れたところです。この種のパラダイムシフトを考えるとき、まず念頭においておくべきは、今回のような“重大なリスクの回避”であり、そのためには、これまでのような利益やスピード優先の考えをひとまず横において考えることが大切です。手法としては、当該パラダイムシフトにより期待されるメリットと想定されるリスクを抽出し、分析・評価し、対策を考案する、といった、いわゆる“リスクマネジメント”の基本的な考え方が基礎になると考えられますが、進めるにあたっては、緊急を要する中にあっても拙速にならないよう、想定される問題点を漏れなく洗い出し慎重に検討することがポイントになると考えられます。

上記の学期の開始時期の問題は、次代の日本を支え、健全な国家の継続性を確保する上で極めて重要な、“教育・人材育成”に直結する課題であり、特に重要です。また、医薬品はいうまでもなく人命の救済、健康の維持のために必須であり、その安定供給が途切れることのない枠組みを考えることは、何にも優先されます。感染症時代に耐えうるパラダイムへの変換は、先ずはこういった、人間社会の健全な営みを継続させるための基礎となる重要な課題を選定し、これらを優先して見直し、現状維持か変換かを迅速に決め、進める場合は速やかに行動計画の策定を行い実行に移すことが望まれます。そのためには、官民が連携し強い信頼関係の下で、さまざまな要件を慎重かつ冷静に議論し、推進することが期待されます。ちなみに、この種の事案には法律の改正が伴うケースが多いと思われますが、国会の審議においても、より有意義で実のある議論が求められるでしょう。

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