GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第34回】

1.ムリムダムラ
 ムリムダムラとは、生産管理において、排除すべき3Mである。Weblio辞書に次のように記載されている。
ムダ・ムラ・ムリとは、生産管理や業務運用の合理化・効率化を進めるに当たり排除すべき要素として挙げられるキーワードである。
ムダ・ムラ・ムリの「ムダ」は、余分に生産する、余計な動作を含んでいる、といった除くべき余剰を指す。「ムリ」は、実践できないスケジュールや切り詰めといった能力を超えた計画を指す。「ムラ」はムダとムリの中間であり、適正な方式が標準化されずにムリとムダの間を行き来している状況を指すといえる。
ムダ・ムラ・ムリの概念は「ジャスト・イン・タイム」の主要な考え方であり、「トヨタ生産方式」の根幹のひとつに挙げられる。経営(マネジメント)から現場のプロジェクト管理、個人の業務・仕事術に至るまで幅広く応用でき、多方面で参照されている。
 医薬品製造所におけるムリムダムラを考えてみる。
 ムリとは、生産計画における無理な計画や手順における無理がある。安定供給の名の下、使用期限や在庫管理が不十分で、急な生産計画を押し付けられることもあろう。急な予定を変更することにより、人為的な逸脱を招くことも多い。手順の無理とは、その製造方法や試験方法において、バリデーションが適切に行われず、バリデーションの場合は特別に時間を優先できたが、通常の生産では、製造の手順や試験検査のタイミングなど時間的に無理が生じることである。製品の出荷のタイミングに試験検査が間に合わず、試験の時間が十分に取れないことも考えられる。生産能力に見合った生産計画が重要であり、人為的な逸脱を防止することになる。
 ムラについて考えてみる。医薬品の品質にムラがあることは言語道断である。GMPは常に一定の品質を求めている。しかし、医薬品には、風邪薬や花粉症などのアレルギー薬など季節変動により、消費量が変動する品目も多い。慢性疾患の医薬品であっても、常に一定に投薬されるわけでもない。ジェネリックでは、各社の競争も激しいであろう中で、生産量にその時期によりムラが生じることも考えられる。常に、安定的に製造する体制を維持することも難しいであろう。ムラのない安定的な供給とムラのない一定の品質を保証することは医薬品製造所の義務である。
 無駄な作業は、医薬品製造において、多く見受けられる。新設備を導入したのに、以前のチェックリストが活きており、製造記録が多く、記録の作成やダブルチェックなどに多くの時間を割いていないだろうか。古い手順に縛られて、業務改善が進まないことも多い。その手順は、旧態依然の産物で、新たなシステムでは、無駄な作業でしかないことも多い。保管場所を検査中と合格品でエリアを分けたうえに、個々のパッケージに識別ラベルを張り、バーコードまでつけ、倉庫管理システムで管理をするところもある。検査中と合格品のエリアを分けると、合格結果が出た時にその品目を移動する作業が生じる。ステータスを変更するだけで、無駄な作業を省くことができる。検査中と合格品のスペースの空き時間が無くなり、有効活用ができる。また、ダブルチェック、トリプルチェックと二重、三重のチェックをすることで、その作業と記録に時間が要することになる。本当に必要なダブルチェック、トリプルチェックであるか見直す必要がある。人や物の動線にも無駄がないかを考えなければならない。無駄な動きを強いることにより、人為的逸脱が発生する。部屋の区画も無駄な壁を築く必要はない。ゾーンを考慮し、交差汚染が防止されていれば十分である。不適合品置き場も施錠し隔離する必要があるが、不適合品が常にあるわけではなく、不適合品のエリアが無駄なスペースとなることもある。また、使用していない設備は無駄だけでなく、埃等の異物の混入の原因となる可能性がある。無駄な設備の撤去も必要である。

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