【FDA発出、バイオシミラー(バイオ後続品)ガイドライン】ASTROM通信<75号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2015.6.1】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー



こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

あっという間に夏めいてきましたが、いかがお過ごしですか?

さて、今年の3月6日、FDAが、アメリカとして最初のバイオシミラー(バイオ後続品)として、アムジェン社のNerpogen(フィルグラスチム)のバイオ後続品のZarxioを承認しました。
ヨーロッパ及び日本では既に複数のバイオ後続品が承認されているのに対し、アメリカは今回が初めてというのは少々意外な気がしますが、この承認の後すぐに、FDAは、製薬企業向けに、バイオ後続品に関する4つのガイダンスを発出しました。今後、バイオ後続品の開発を積極的に推し進めていくことが予想されます。
そこで、今回は、FDAが発出した4つのガイドライン(うち1つはドラフト版)について、取り上げたいと思います。


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バイオ後続品とは
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4つのガイドラインについて取り上げる前に、バイオ後続品について確認しておきたいと思います。
■バイオ後続品とは
国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(以下「先行バイオ医薬品」という。)と同等/ 同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品である。
一般にバイオ後続品は品質、安全性及び有効性について、先行バイオ医薬品との比較から得られた同等性/ 同質性を示すデータ等に基づき開発できる。
「同等性/ 同質性」とは、先行バイオ医薬品に対して、バイオ後続品の品質特性がまったく同一であるということを意味するのではなく、品質特性において類似性が高く、かつ、品質特性に何らかの差異があったとしても、最終製品の安全性や有効性に有害な影響を及ぼさないと科学的に判断できることを意味する。
(平成21年3月4日付薬食審査発第0304007号「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」別添)

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、同一投与経路の製剤であり、効能・効果、用法・用量が原則的に同一であることが求められているのに対し、バイオ後続品は、先行バイオ医薬品と品質特性において類似性が高い(similar:シミラー)ことを求められているという点で、ジェネリック医薬品とは異なります。


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FDA発出のバイオ後続品に関する4つのガイドラインの概要
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4つのガイドラインについて、5月14日付FDA Voiceに概要が説明してありますので、それを引用することにします。

■1.先行バイオ医薬品との生物学的類似性実証における科学的考察■
<概要説明>
このガイドラインは、製薬企業がバイオ後続品として提案した製品が、先行バイオ医薬品と確かに生物学的に類似していることを実証するのに役に立つ。
<補足>
ガイドラインは下記の章からなり、生物学的類似性を実証する際のアプローチや、実施すべきことが書かれています。
Ⅰ.序文
Ⅱ.適用範囲
Ⅲ.背景
Ⅳ.タンパク質医薬品の複雑さ
  A.タンパク質医薬品の性質 及び 関連する科学的考察
  B.製造工程の考察
Ⅴ.アメリカで承認された先行バイオ医薬品と非承認の比較医薬品
Ⅵ.開発アプローチ 及び 生物学的類似性を実証するためのエビデンスの評価
  A.生物学的類似性を実証するための段階的アプローチの活用
  B.生物学的類似性の証明を評価するためのTotality-of-the-Evidence
    (エビデンスの統合)アプローチの活用
Ⅶ.生物学的類似性の実証
  A.構造解析
  B.機能分析
  C.動物データ
  D.臨床研究 - 全体的考察
Ⅸ.市場流通後の安全性モニタリングによる考察
Ⅹ.FDAとの協議
用語
<出典>
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM291128.pdf

■2.治療用タンパク質医薬品の先行バイオ医薬品品質との
   生物学的類似性実証における品質の考察■
<概要説明>
このガイドラインは、製品が先行バイオ医薬品に“高度に類似している”ことを示す分析研究に焦点をあてている。
<補足>
ガイドラインは下記の章からなり、生物学的類似性を実証する際に考慮すべき品質ファクタが書かれています。
Ⅰ.序文
Ⅱ.背景
Ⅲ.適用範囲
Ⅳ.一般原則
Ⅴ.製品の高度の生物学的類似性を評価する際の考察ファクタ
  A.発現系
  B.製造工程 
  C.理化学的知見の評価
  D.機能活性
  E.受容体結合と免疫化学的特性
  F.不純物
  G.参照製品と参照基準
  H.最終製品
  I.安定性
Ⅵ.結論
Ⅶ.関連ガイドライン
用語
<出典>
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM291134.pdf

■3.バイオ後続品:生物製剤価格競争・イノベーション法(2009年)の
   実施に関するQ&A■
<概要説明>
このガイドラインは、バイオ後続品の開発と申請手順に関する一般的な質問に対して回答している。
また、バイオ後続品の開発を認める法律をよりよく理解するための情報を含んでいる。
<出典>
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM444661.pdf

■4.バイオ後続品:生物製剤価格競争・イノベーション法(2009年)の
   実施に関する追加Q&A■
<概要説明>
パブリックコメントを受付中であるため、このガイドラインはまだドラフトとなっている。
<出典>
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM273001.pdf


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まとめ
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冒頭にも書きましたが、FDAが今年の3月にはじめてバイオ後続品を承認したというのは、意外に遅い気がしますが、FDAはこれを“偉大なスタート”として、今後、バイオ後続品を増やしていこうとしているようです。
ちなみにヨーロッパでは、2005年10月30日にEMEAからバイオ後続品のガイドラインが発出・適用され、2014年10月23日にはEMAから改訂版が発出され、今年の4月30日に適用されています。
最新のガイドラインは下記のURLから参照できます。
http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2014/10/WC500176768.pdf
日本でも既にいくつかバイオ後続品が承認されていますが、ヨーロッパやアメリカに比べてガイドライン等の整備が進んでいないようです。

バイオ後続品はジェネリック医薬品と比べると、それほど開発費を抑えることができない、承認のための臨床試験が大変ということがあるそうですが、それでも、新薬を開発するよりは開発費を格段に抑えることができると言われています。
今後、日本でどれくらいバイオ後続品が普及していくのか、非常に興味深いところです。
 

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