品質に関する承認申請資料について【第6回】

 2回に分けてPMDAが公表している新医薬品の承認に係る審査報告書の中から参考となりそうな事例を抜粋して解説を加える。なお、品名/社名は伏せ、審査報告書で非開示の部分は筆者の判断で適宜補った。取り上げたのは新医薬品に係る照会事項であるが、後発医薬品の開発にも参考になるものである。

1. 製造方法に関する照会
(例1)原薬における管理戦略の妥当性について

 機構は、出発物質の妥当性を説明するよう求めた。
 申請者は、以下のように回答した。出発物質Aは広く使用されている化学物質であり、原薬中に出発物質Aに由来する■ % を超える類縁物質は確認されていない。また、エナンチオマー及びジアステレオマーを含む類縁物質については中間体Bの規格として管理している。中間体Bは、化学的性質及び構造が明確にされており、物理的、化学的に安定な化合物である。原薬中に中間体Bに由来する■%を超える類縁物質は確認されていない。また、類縁物質は原薬規絡と同じレベルで管理されている。■は■の管理値を参考に管理されている。
 機構は、CQA及びCPPと判断されなかった項目の妥当性を説明するよう求めた。
申請者は、以下のように回答した。添加実験を行った結果から、製造工程における除去能力が十分であることが確認できたことから類縁物質1及び類縁物質2以外の有機不純物はCQAとは判断しなかった。また、操作範囲を考慮した十分な検討範囲において不適合境界が存在しなかった■、反応工程における■の■以外のパラメータはCPPとは判断しなかった。機構は、回答を了承した。
 
(解説)
 原薬出発物質の妥当性を問う照会は、新医薬品、後発医薬品を問わず頻出される。
 出発物質については、ICH Q7ガイドラインで「原薬の製造に使用され、かつ、それが原薬の構造中の重要な構成部分として組み込まれる原料、中間体又は原薬である。市販品の場合、委託又は販売契約の下で供給者から購入する場合又は自社で製造する場合がある。原薬出発物質は、通常、化学的性質及び構造を明確にされているものである。」と定義されている。一方、平成17年2月10日付薬食審査発第0210001号審査課長通知「改正薬事法に基づく医薬品等の製造販売承認申請書記載事項に関する指針について」では、出発物質についてICH Q7ガイドラインに従うものの、「反応工程が1工程のみの製造工程の記載は出発物質の品質が直ちに原薬の品質に影響を与える危険性があるため、原則として避けるべきである。」とされ本邦及び外国とでは取扱いに若干の相違がある。
 ICH Q11ガイドライン「原薬の開発と製造」では出発物質選定の一般原則が示されており、さらに原薬の製造工程に関して、不純物が工程中でどのように生成し、各製造工程を変更した場合に不純物の生成、挙動及び除去に対してどのような影響を及ぼすか、管理戦略が適切であるかについて承認申請添付資料に記述するよう規定されている。例示の品目/会社では、出発物質についてQ7及びQ11ガイドラインの考え方に則った選定をしていることが伺える。また、類縁物質の添加試験により製造工程における挙動を確認しているのは参考になる点である。
 Q11ガイドラインでは、原薬の開発に対して、従来の手法(traditional)あるいはより進んだ手法(enhanced)又は両者の組み合わせを利用することができるとあるが、出発物質の選定については、添加試験を行わないまでもQ11ガイドラインに則し、選定の妥当性を資料で述べる必要がある。
 なお、後発医薬品では「医療用医薬品の承認申請の際に添付すべき資料の取扱いについて」(平成20年1月9日薬食審査発第0109005号)で製造過程における不純物及び残留溶媒が適切に管理されていることが説明できる資料の提出が原則必要であると述べられており、不足している場合、「設定した試験方法で製造過程における不純物及び残留溶媒が適切に捕捉され管理できることを説明してください。」等の照会が発出される。

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