医薬品品質保証こぼれ話【第10回】

試験検査業務の重要性とマネジメント

試験検査業務、いわゆる“品質管理業務”(以下、「QC業務」)は医薬品製造業のみならず、どの製造業においても大変重要であることは言うまでもありませんが、医薬品の製造および品質保証という領域においては特に重要であるため、今回、テーマとして取り上げ、その重要性を改めて確認しておきたいと思います。

QC業務の重要性は、それぞれの産業界において十分認識なされているはずですが、鉄鋼や自動車関連の産業界において、無資格者による製品試験や出荷検査データの改ざんなどが露見し、製品品質の信頼や企業の信用にかかわる問題に発展していることは周知のとおりです。医薬品製造においても、内外の企業において試験記録の改ざんやねつ造が確認され、製品回収や操業停止となる事態を招いています。

こういった問題の原因は、一に、担当者だけの問題ではなく、管理者や組織全体のあり方が関係していることが多いことは、これまで発生している事例からも見てとれます。従って、こういった課題の解決には、担当者と管理者が一体となり組織の問題とし取り組む必要があります。今回とり上げる試験検査に関するデータや記録(以下、「QCデータ」)は、医薬品の品質保証という点においては特に重要であり、その信頼性の確保は製薬企業の要と言っても過言ではありません。

医薬品に関するQC業務の主な目的は、日常の生産に連動して発生する原材料や製品の規格への適合性を判断することにありますが、それだけではありません。工程トラブルや品質クレームに関連して発生する試験検査、また、安定性モニタリングなどの業務もあり、検体の数は厖大で、どの企業のQC部門も多忙を極めているのが現状と推察されます。これへの対策の一つとして、試験業務の外部機関への委託が考えられますが、コストの発生、契約締結や施設監査などの追加業務、また、OOS(規格外試験結果)が発生したときの対応に要する時間などを考慮すると、特殊な試験を除き、可能な限り企業内で人材を確保し、教育訓練や資格認定制度を充実し、対応することが望まれます。

QCデータは、医薬品の場合は工程管理という側面においても大変重要です。GMPでは、“品質は工程で造り込む!”という表現をしますが、この、“品質を造り込む”製造工程の適格性の評価や判断の基礎になるのもQCデータであり、工程の適格性を検証する業務、“バリデーション”はQCデータの信頼性が前提になっています。もし、QCデータが信頼性に欠ける場合、バリデーション結果そのものが信頼できないものとなり、適正な製造条件の設定ができず、ひいては、“工程で品質を造り込む”ことも覚束なくなります。このように、QCデータは医薬品製造業務の様々な側面で重要な役割を果たすことから、その信頼性の確保は大変重要であり、もし、信頼性に問題があれば、医薬品そのものの品質の信頼性が危ぶまれることになり、そのことは、上記したように、医薬品企業そのものの信用といったことにも大きく影響を及ぼします。

この重要なQCデータですが、信頼性を確保する上で基本となる大切なことが二つあります。一つは試験精度が高いこと、そして、もう一つは、不正がないことです。前者に関しては、試験検査員の教育訓練や資格認定を充実し、GMPで規定されているQC業務を的確に遂行することが基本になります。また、後者に関してはOOS発生時などの対応に不正が疑われないよう、対応のシステムを整備し、関係者への教育訓練を徹底することなどがポイントになり、そのためには、データインテグリティを含む、GMP記録の信頼性確保に関する様々な要件、知識を関係者で共有することが基礎になるのは言うまでもありません。

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